アメリカンフットボールのプロリーグ、NFLのスター選手、RBレイ・ライスが婚約者をエレベーター内で殴打しているシーンが先週公にされ、アメリカ内外で波紋を呼んでいる。
 日本でもテレビで流れたのは、映像のインパクトが大きかったからだろう。目にされた方もいるだろうが、見ていて気持ちのいいものではない。
 映像に対するNFL側の反応は素早かった。まず、ライスがプレーしていたボルティモア・レイブンズは即座に解雇を発表。加えて統括団体であるNFLはリーグからの追放を決めた。これに対してライスは法的措置を取る見込みだ。
 この処分に至った経緯について、NFL広報のブライアン・マッカーシー氏は電子メールで、こうコメントしている。
 「われわれは法執行当局にこの事件に関するエレベーター内の映像を含む全ての情報を求めていたが、このビデオをわれわれは入手することができず、今日まで誰も見ていなかった」
 これまでの調査が完全なものではなかったことを認めつつ、今回の事態を重視して判断を下したことをうかがわせた。
 アメリカでは、スポーツ選手には好むと好まざるとにかかわらず、社会の規範となるよう「ロールモデル」になることが求められる。その意味で、21世紀のプロ統括団体の大きな「宿題」には、次のようなものが挙げられる。
①ドメスティック・バイオレンス(DV)など暴力行為の追放
②選手の賭博行為に対する監視
③禁止薬物に対する断固たる態度、処置
 行政組織と同じで、リーグ側には「ガバナンス」の能力が問われる時代になった。
 プロバスケットボールのNBAではコミッショナーが交代、初夏には人種差別発言をしたロサンゼルス・クリッパーズのオーナーに対して厳しい態度で臨み、高い評価を得た。
 そしてメジャーリーグも次のコミッショナーが発表され、どんな方針を打ち出してくるのかが楽しみでもある。
 NFLのロジャー・グッデル・コミッショナーはこれまで財政的に豊かな組織を作り、繁栄に導いてきたが、レイ・ライスの騒動によるダメージコントロールを、どのような形で行うのか、その手腕に注目が集まる。(スポーツジャーナリスト 生島淳)

生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル
 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBSのスポーツ番組ではキャスターを務めている。

【写真】チームを解雇され、リーグから追放処分を受けたレーベンズのRBライス(AP=共同)