社会人アメリカンフットボール「Xリーグ」の王者オービック・シーガルズは、3回目の海外遠征の相手に、本場・米国のセミプロチームを選び、8月11日渡米した。
 あの名門アラバマ大が本拠地とする「フットボールの町」アラバマ州タスカルーサ市で現地時間14日夜(日本時間15日午前)に、セミプロリーグ「APDFL」(Amateur to Professional Developmental Football League)の選抜チーム「BLAZERS(ブレイザーズ)」と対戦する。


 APDFLは、アメリカ南東部のアラバマ州、ジョージア州、フロリダ州、サウスカロライナ州を中心に活動するチームからなる教育リーグで、各チーム18歳から30歳の選手を中心に構成されているという。試合を目前に控えたオービックの大橋誠ヘッドコーチ(HC)に、今回の遠征の目的や抱負を聞いた。


 Q:オービック・シーガルズとして3回目の海外遠征。過去2回はドイツだったが、今回は本場米国ということになった。最大の目的は。
 大橋HC:日本のフットボールチームの国際化がなかなか進んでいかない中で、本場米国では、NFLやNCAA、アリーナフットボール以外のフットボールはどうなっているのかということを、身を持って知ることが一番の大きな目的。そこを経験することによって日本のフットボールチームがいろいろな形で外に向かっていくような形ができればいいなと考えている。


 Q:遠征先として米国というのは、いつ頃から頭にあったのか。
 大橋HC:第1回の海外遠征では、クラブチームが比較的しっかりしているということでドイツを選んだ。その後、次はどうしようかと考えていく中で、欧州のオーストリアやフランスのチームが候補として上がる一方で、米国では、NFLやカレッジフットボール以外は存在しないのかということを考え始めた。以前から少しずつ可能性を探ってきて今回に至ったということだ。


 Q:遠征先がアラバマ州タスカルーサということで、米カレッジフットボールで現在トップ級の強豪名門校アラバマ大学の本拠地。シーガルズの地元習志野市がタスカルーサ市と姉妹都市ということで縁があったのか。
 大橋HC:以前から、習志野市はタスカルーサ市と姉妹都市という関係にあったのだが、(習志野)市のほうではタスカルーサとアメリカンフットボールの関わりはあまりご存じなかったようだ。われわれが、姉妹都市であることを知った際、自治体のつてを使わせていただいて、アラバマ大学はどんなフットボールをしているのか、実際に見せてもらうことはできないかということで、2011年に私を含めたコーチ数人で訪問した。
 実際に行ってみるとタスカルーサはまさに「アラバマ大フットボールの町」で、風土としてフットボールへの親近感とプライドが強く感じられた。こういう町で、日本のフットボールを見せることができれば、習志野市とタスカルーサ市の新しい関係ができるのではないかなという期待はその時からあった。


 Q:過去2回のドイツ遠征は、春シーズンの途中だったが、今回は秋季リーグ戦の半月ほど前。その意図は。
 大橋HC:夏の時期に、通常の夏合宿と、これまでも時々他チームとやっていたプレシーズンゲームと二つの位置づけを組み合わせた遠征をやってみようというのが今回のポイント。この時期にいろいろな経験をさせたい。


 Q:7月にU―19の世界選手権でアシスタントヘッドコーチをされたが、そこでの経験も踏まえて、あらためて米国や北米のチームと試合したときの問題点は。
 大橋HC:2007年の川崎のW杯(現世界選手権)決勝で米国代表に惜敗、2011年のオーストリア大会ではカナダに敗れて決勝に進めなかった。今回U―19で米国に敗れた。一連の大会で同じように感じるのは、第4クオーターまでの、いろいろな意味でのスタミナが課題だということ。特にコンタクトプレーでのスタミナという面で、やっぱり息切れしてしまう。
 だから最後の最後まで戦いきれないということがあった。今回のU―19では、自分の過去の経験を踏まえて良いサジェスチョンができるのではないかと思った。米国戦では大敗しながらも、後半に入って覚醒してきた部分もあったと思うのだが、メキシコ戦はまさしく、そういう要因で追いつかれて引き分けてしまった。
 そこを、日本のフットボールとしてどういう風に克服していくのか。今日本国内でやっているフットボールがさらに化けるとすればそれはどこにあるのか。やはりアメリカのトップレベルのフットボールに近づいていくということだと思う。だから今回の試合での目的は、最後までコンタクトゲームで互角に戦えるかということが、私の中では大きなトライだと思っている。
 アメリカンフットボールは、点を取ることが一番大事ではあるのだけれど、そこに至るプロセスとして、しっかりぶつかり合いをして負けないということに今回は挑戦したい。そこが足らないということになるのなら、どの程度足らないのかということもしっかり確認したい。


 Q:今回の相手について、ウェブ上の動画などで確認したのだがなかなか実力が分からない。
 大橋HC:正直に言って、フットボールチームとしての精度が高いとか、すごく良くオーガナイズされているかといえばそうではないだろうと思う。ただわれわれも過去の外国勢との試合で経験しているのは、QBやRBなど攻撃のスキルポジションに馬力があって身体能力の高い選手がいたり、あるいは守備でもLBやSなどで機動力のある大きな選手がいたりすると、フィールドの使い方がまったく変わってきてしまう。そういうことは今回も起きるのだろうなと思う。
 1~2人、あるいは4~5人、それなりの能力の選手がいて、戦術的には相手のプレーを止める形は作れていたとしても、一人の選手にプレーを壊されて結果オーライにされてしまう。それを経験できる相手ではないかと考えている。


 Q:開幕直前のこの時期のゲーム。負傷は別にして気を付けることは。
 大橋HC:日本のフットボールの場合は、上位同士の戦いになればなるほど緻密さがすごく求められるのだが、普段とは勝手の違う相手と戦って、必ずしもそこ(緻密さ)の部分の勝ち負けではないかもしれない。そうなったときにわれわれ自身がこれまで自分たちのやってきたことを見失わないことが大事だ。
 一言でいうと雑なフットボールに終始しないこと。ここで雑なフットボールに身を浸してそのままシーズンインしてしまうとすぐに影響が出る。今回の試合は、緻密さや精度で勝ちたいのではないけれど、そこはきちんと外さずその中でどれくらい思い切ったぶつかり合いができるかが勝負だ。


 Q:OLの坂口裕やLBの澤田遥のように、若手の中で大型選手が増えているが、今回期待する選手は。
 大橋HC:若返ったインサイドの守備ライン、冨田(祥太)や清家(拓也)がガッツリいけるのか。また澤田のようにサイズのある選手が米国相手にどういうプレーをするのかといったところを注目している。
 オフェンスではやはりQBの畑(卓志郎)がどういうスタイルで米国選手と戦うのかすごく興味深い。ちゃんとオフェンスを組み立てるのか、あるいは相手守備を引っかき回すのかはわからないが。もちろんベテランのQBにもきちんと働いてもらうが。

 12分クオーターの試合なので、サイドラインがぼやぼやしていると選手起用のタイミングを失ってしまう。積極的に早いタイミングでいろいろな選手を使っていきたい。(聞き手・毎日新聞 小座野容斉)

【写真】選手の動きに厳しい視線を向ける大橋誠HC=撮影:Yosei Kozano