6月に日本アメリカンフットボール協会の新会長に就任した国吉誠氏(60)=SMBCファイナンスサービス取締役副社長=は早大学院高、早大、社会人で選手としてプレー。高校と銀行のチームでは指導者も経験した。
 組織改革の舵取りを任された新リーダーが、競技の発展に向けたビジョンを語ってくれた。(聞き手・週刊TURNOVER編集長 宍戸博昭)


 ―アメリカンフットボールとの出会いは。
 「小学校では野球と卓球をやっていた。中学では吹奏楽部でクラリネットを吹いていた。高校では、青空の下でスポーツをしたいという思いもあって野球部の練習を見にいったが、体質が自分に合わないのでやめた。高校の同級生に誘われて、アメリカンフットボール部の練習を東伏見に見にいった。練習が厳しそうじゃなかったが決め手になり、入部した。ポジションは攻守のライン。大学では、QBをしていた高校の先輩に大学に来たらエンド(E)をやらせてやるから来いと言われて入部した。大学1年の春からタイトエンド(TE)でプレーして、社会人(三井物産、さくら銀行)ではランニングバック(RB)もプレーした」


 ―新会長として精力的に動いている。
 「浅田(豊久)前会長の頃から支援していただいている方たちに会っている。そんなに大きな競技団体ではないが、各方面から支援してもらっていると実感している」


 ―国内のフットボールの現状は。
 「現在、国内のアメリカンフットボールは競技者1万6000人、コーチ、スタッフが9000人と承知している。ただ、大学に関しては各チームの格差が大きい。関学や早稲田など部員が250人いるチームがあれば、部員が減少して7人制に移行したチームもある」


 ―新会長として独自色をどう出していくのか。
 「サラリーマン生活が長いと、この人はどんなタイプかを分類する方法があることを学ぶ。自分は調和型を目指す。率先垂範もいいが対話、調和がないと物事は進まない。前任者のやり方を踏襲し、自分の色を出すのはその後と考えている。二大勢力の関東と関西をはじめそれぞれの地区、地域、カテゴリーの現状をよく理解した上で組織改革などを進めていきたい」


 ―日本学生協会副理事長として「TOKYO BOWL」を立ち上げた。
 「日本学生協会副理事長の立場で提案した。ポストシーズンゲームはもっと交流があってもいいという考えが基本になっている。当時の日本学生協会の平井(英嗣)理事長とも考え方が合致した。過去3回、意義のある試合が続いている。去年の慶応と立命は創部以来初対戦。第2回は関学と日大のライバル校が死力を尽くして引き分けた。いい形で展開している。去年は甲子園ボウルの1週間後。甲子園ボウルを盛り上げるには1週前の開催にしたい。全日本大学選手権との絡みもあるので、日程については協議していきたい」


 ―財政面の安定が競技発展には不可欠になる。
 「アメリカンフットボールは、何をやるにもお金がかかるスポーツ。財源を確保し選手、関係者の負担をいかに減らすかが大切な部分になる。ライスボウルを後援してくれているプルデンシャル生命など、積極的に支援してくれる企業があるのはありがたい。事務局の充実も急務。現状はほとんどのスタッフがボランティア。協会としての体制作りのためにも、財源の確保は大切だ」


 ―会長として全てのカテゴリーを把握していなくてはいけない。
 「時間は作るもの。高校の監督をやっていたときも、時間を作る努力をしていた。公益社団法人のトップになったのは会社の理解があってこそ。就任して1カ月。日曜日を使って、例えばフラッグフットボールの関係者らと会っている。会長が出しゃばると皆さん議論しにくいので、基本的に黙って聞いている。全国のそれぞれの組織の声を聞くようにしている。試合会場に行くのは大事だが、フラッグやシニアの方たちとの懇親会を通じて情報を共有していきたい。誰かがつなぎ役にならないといけない。それが自分の役目だと思っている。いろんな方々と接点を持つことを心掛けている」


 ―競技の発展に一番大事なのは。
 「安全対策。アメリカンフットボールは素晴らしいスポーツ。しかし、一方で重篤な事故も起きている。ここを真剣に見ていかないといけない。安全の手引きの作成などで、ドクターとの会合を定期的に開いている。プロテクター、熱中症の問題。指導者、競技環境の問題。他の運動部とのグラウンド調整もある。専用グラウンドを持っていないチームも多く、夏の暑い時間を避けたくてもそうはいかない場合がある。各地区、団体が状況に応じた対策を講じているが、協会としての啓蒙活動も大切だ」


 ―タックルの方法などについてクリニックを開催している。
 「協会として、いろんな形で協力していきたい。積極的に参画してくれている方たちには頭が下がる。ただ、全国的に広めようとすると一部の指導者に負担がかかるなどの問題も生じる。いわゆる属人的な活動にしてはいけない」


 ―日本代表についてのビジョンは。
 「代表とはなんだ、ということをしっかり定義していきたい。フル代表、大学代表、U19代表をどうするか。重要な岐路に立っている。ここでも体制と財政の問題が頭をもたげてくる。やり方としては『ジャパンアカデミー』という形で早めに案内して、選手の発掘、選抜をしている。代表コーチの経験者の方たちに話を聞いて、安心して学生が参加できる代表チームにできればいい。まだまだ、自己負担が発生している。コーチの方たちも自チームの指導を休んで参加している。資金集めをしないといけない」


 ―定期的な国際試合を見たいというファンは多い。
 「フル代表は4年に一度、大学とU19は2年に一度世界選手権が開催されている。この春は早稲田が米国チームを招聘した。単独チームがそうしたことをするのがいいのか、それとも外国からチームを呼んで日本の選抜チームと対戦させるのか。学生、社会人の選手の目標作りも大切。2024年か28年のオリンピックでは五輪競技になる可能性がある。今フラッグフットボールをやっている小学生にとっては目標になり得ると思う」


 ―競技の魅力を伝える努力も必要だ。
 「甲子園、ジャパンエックス、ライスの国内3大ボウルゲームがNHKのBSで中継されているのは、これまでの協会としての努力の結果。例えば甲子園ボウルを見た地方の高校生が、大学でアメリカンフットボールやってみたいという子が増えていると聞いている。今は、インターネットなどで知ってもらえるのも大きい。これまでならテレビ、新聞だけだったのが全国的に周知されるようになった。日本のアメリカンフットボールとはこうなんだというものも含めて、競技としてのブランディングをしていければいい。ホームページ、SNSもやり方は難しいが、常に発信していくことが大切になる。試合の中継を含め、ネットの充実は大事。動画などをこまめにアップすることで、ファンに興味を持ってもらえる。メディアにどんどん話題を提供していかないといけない」


 ―少子化の流れの中での対策は。
 「アメリカンフットボールは、他競技から転向しやすい競技。いろんな才能が生かせるという、スポーツとしての多面性がある。メディカル、健康、栄養面で先端を行っているので、いい意味で生涯スポーツに関われる要素がある。そして、大学からでもできるスポーツとしてもう一度見直してほしい。私のように中学時代にクラリネットを吹いていた人間でも、努力次第でかなりのレベルまで到達できるスポーツだから」

【写真】6月4日に東京・アミノバイタルフィールドで行われた、早大とイリノイウェズリアン大の日米交流戦での国吉誠・日本アメリカンフットボール協会新会長=撮影:seesway