見慣れない番号「22」をつけた見慣れた顔が、フィールドで寂しそうにぽつんと立っていた。
 6月19日、東京ドームで開催された「パールボウル」で優勝したオービックの面々が喜びに沸く中、新人RB李卓選手の心中は複雑だった。


 2年前の世界選手権では、学生としてただ一人日本代表に選ばれた李選手は、今年の春に慶大を卒業。パイロットを目指して日本航空に入社した。
 現在は成田の寮に住み、研修の一環で関連会社の地上スタッフとして業務に従事している。パイロットになるための本格的な訓練に入るのは、2年後になるそうだ。


 「僕はたくさん練習して何とかしてきたタイプ」。4日勤務した後の2日の休みが、必ずしも土日に重なるとは限らない。
 個人的なトレーニングは継続しているが、チーム練習に参加できないもどかしさを感じている。


 5ヤード、3ヤード、3ヤード。抜群のスピードとボディーバランス、そしてパワーでロングゲインを重ねてきた逸材はこの日、3回ボールを持ってわずか11ヤードに終わった。
 「練習ができていないので悔しい。今日も相手のIBMから『下手になったな』と野次を飛ばされたけれど、自分でも下手になったと思った」


 主将として慶大を率いた昨年、甲子園ボウル出場まであと一歩に迫りながら、法大に敗れて悲願を達成できなかった。
 「法政との試合は、今でも思い出すと眠れない苦い思い出。それを払拭するためにも、社会人で必要とされる選手になりたい。この春はチームにぶら下がっていただけ。僕にしかできないことがあると証明したい」という。


 パイロットになる夢は叶えたい。一方で、国内のトップリーグで活躍したいという思いも強い。
 「今後、どちらかを選ぶことになる。正直なところ、毎日悩んでいる」。スターRBの葛藤は続く。(編集長・宍戸博昭)

【写真】「パールボウル」で優勝したオービックのRBとして出場した李卓選手=6月19日・東京ドーム