会社の机の引き出しを整理していたら、変色して古書独特の刈ったばかりの草のようなにおいがする小説が出てきた。


 「雄(おす)の時代」―小説 篠竹幹夫―(大下英治著)。
 1991年10月に発行された小説は題名の通り、没後11年が過ぎた今も、日本のアメリカンフットボール界を代表する名伯楽として語り継がれる、故篠竹幹夫元日大監督の半生を描いたもので、今は絶版になっている。


 「悪魔の申し子」「深夜のショットガン」「優しさとスパルタと」「慢心の落とし穴」「揺れる恋」「靴にカミソリの刃」―。本を開くと、刺激的な小見出しが並ぶ。
 「闘将」の代名詞的な存在だった篠竹さんを、著者が長期にわたって取材してまとめた一冊には、タイトルが懸かった大試合の内容や登場人物がリアルに書かれている。


 「揺れる恋」は、監督に就任した27歳の時に知り合った女性との「恋物語」だ。
 映画の名場面のような二人の克明な会話のやり取りには、男女の微妙な心の綾が見え隠れしていて、篠竹さんのロマンチストとしての一面も垣間見える。


 ストーリーの根底に流れる〝主旋律〟は〟もちろんフットボール。「学生以上に自分に尽くしてくれる存在はいない」と、生涯独身を貫いた鬼監督の「フェニックス」、そして競技への深い愛情が伝わってくる。


 物語の後段、練習中に相手を攻略しようとするWRと、それに対抗するDBをクローズアップした下りがある。
 紹介されているカギ括弧の中身は過激だ。本当にそう言ったのかどうか。その時無我夢中だったDBは、残念ながら覚えていない。(編集長・宍戸博昭)

【写真】故篠竹幹夫元日大監督の半生を描いた小説「雄(おす)の時代」