お互いをリスペクトし、相手の気持ちを忖度(そんたく)する。
 選手として対照的なプロセスを経て頂点を極めた同学年の二人が、手を携え同じ目標に向かって歩んでいる。


 Xリーグ、ノジマ相模原の須永恭通ヘッドコーチ(HC)は、日大時代にQBとして3度の日本一を経験した。
 1990年度の日本選手権(ライスボウル)では、最優秀選手賞の「ポール・ラッシュ杯」を獲得、NFLヨーロッパ(NFLE)でもプレーした。


 昨シーズンRBコーチに就任した中村多聞さんは、大学時代は全くの無名。努力でNFLE参戦の権利をつかみ、2001年のライスボウルでは、アサヒ飲料のエースRBとして活躍し「ポール・ラッシュ杯」に輝いている。


 昨季のノジマ相模原は、名門ミシガン大からQBデビン・ガードナー選手が加入し優勝候補にも挙げられていた。
 しかし、結果は接戦をことごとく落として悔いの残るシーズンになった。


 「自分たちはエリートチームではないのに、何か勘違いをしていた」と、須永HCは振り返る。
 もう一度地に足をつけたチーム作りを心掛け、新たな気持ちで2017年春のシーズンを迎えた。


 5月21日の「パールボウルトーナメント」では、初めて王者・富士通を38―20で破り、準決勝に進出した。
 相手のエースQBコービー・キャメロン選手が出場しないという状況だったが、「目の前の試合に勝つ」という須永HCの思いが伝わってくる試合内容だった。


 請われて早大でも指導している「多聞コーチ」。やんちゃな兄貴分といったキャラクターで選手、スタッフから慕われている。
 「ディフェンスに囲まれたら、迷わず思い切り突っ込め。考えるのはそれからだ」―。
 教え方はいたってシンプル。そこには本場NFLのキャンプで学び持ち帰った細かいテクニックに、独自の理論が加味されている。


 炎天下で真っ黒に日焼けした二人。その相性は良好とみた。(編集長・宍戸博昭)

【写真】ノジマ相模原の須永恭通ヘッドコーチ(右)と中村多聞RBコーチ=5月21日・富士通スタジアム川崎