プロ野球のバッターは「打率3割」が一流選手の目安になっている。つまり、10回のうち7回は失敗が許されるのである。


 アメリカンフットボールには、ディフェンスバック(DB)というポジションがある。守備の後方に位置して、相手ワイドレシーバー(WR)のパスレシーブを邪魔するのが一番の仕事である。
 その成功率は首位打者の打率と同じか、それを少し上回る程度だろうか。


 クオーターバック(QB)からWRへ鮮やかなロングパスが決まってTD―。そんなシーンに期待するファンの願いを真っ向から否定し、ひたすらボールを追い妨害するのである。


 先日、大学時代にDBだった各大学のOBの集まりに参加した。「あの時パスを捕られた理由はこうだ」「自分のサインミスでやられた」などなど。口をついて出てくるのは失敗談ばかりである。
 その描写は生々しく、まるで昨日のことのように細部にわたる。それはそうだ。7割近くはうまくいかない。それがDBという役回りなのだから。


 「ミスを引きずらない。気持ちの切り替えが早い」。一度や二度失敗したくらいで落ち込んでいたらつとまらない。DBをプレーする上での絶対条件である。
 たまに訪れるインターセプトのチャンスは、DBにとって最大の見せ場である。奪ったボールをそのままエンドゾーンまで持ち込めば、一気に溜飲が下がるというものだ。


 「やっぱりDBは因果な商売だね」。ひとしきり「ガス抜き」をした後の全員の思いである。
 これを笑って認める〝度量〟を持ち合わせているのも、DB出身者のいいところだ。
 もちろん、重要なポジションというプライドもある。


 ここまで書いて、ふと考えた。「それぞれ自分が一番だと思っているQB経験者が集まったら、どんな話になるのだろう?」。きっと「楽しい飲み会」にはならないのではないか。
 勝手な想像だけれど、そんな気がする。(編集長・宍戸博昭)

【写真】2015年の甲子園ボウルで、早大のパスをインターセプトする立命大DB奥野喬(左)=阪神甲子園球場