試合前日の練習後、当日に爪を切らない。手足の感覚に、微妙なずれが生じるから。新しいソックスは、履く前に一度水をくぐらせる。シューズの中で足が滑らないように。
 試合前の準備は、それが特別な相手となるとより念入りになり、何とも言えない高揚感があった。


 「最悪の事態を想定して試合に臨め」と監督は言った。直接対決する選手が体調を崩さないかと、不埒なことを考える。後ろ向きな思考と姑息な願望。いかんいかんと頭を振る。
 パスを捕られたり、タックルを外されたり。「最悪の事態」は次々と浮かんでくるのに、自分が優位に立っているシーンは思いつかない。やれやれと諦めて、床に就く。


 4月30日、神戸・王子スタジアムで開催される「青の関学」と「赤の日大」の定期戦は、第50回の節目を迎える。
 2015年は、日大の創部75周年に関学が「祝意」を込めて2年連続で東京にやって来た。そのお礼にと、今回は日大が昨年に続いて神戸へ遠征する。


 定期戦の通算成績は関学の29勝17敗3分け。前年度の学生王者は攻守で主力が卒業し、新チームをどう作ってくるかに注目が集まる。
 一方の日大は、昨秋のリーグ戦で3勝4敗と負け越し「捲土重来」を期すシーズン。ライバルとの春の一戦は、秋に向けて勝負にこだわりたいところだろう。


 「お互い自分たちにないものを持っているから、意識するし認め合うんやろね」。関学の名QBとして日大を倒し、そして屈したこともある広瀬慶次郎・現関学高等部総監督はそう話す。


 16勝10敗2分け。「フェニックス」が宿敵「ファイターズ」に勝ち越している甲子園ボウルでの優勝から遠ざかって、27度目の春を迎えた。(編集長・宍戸博昭)

【写真】2015年5月、東京・アミノバイタルフィールドで行われた日大と関学の第48回定期戦=撮影:seesway