関学大の監督を長く務めた武田建さんは、経験豊富な心理学者としても知られている。
 80歳を過ぎ、日本のアメリカンフットボールの殿堂入りも果たした「プロフェッサー」と、年明け早々にじっくり話をする機会があった。


 今でも関学高等部でレシーバーにアドバイスを送るなど、武田さんのフットボールへの情熱は衰えていない。
 武田さんは「指導者になった頃の私は、怒ってばかりいた」という。実際、当時の教え子に聞くと「ケンちゃんは、ほんまに怖かった」と口をそろえる。


 しかし、ある時期から「鬼コーチ」と決別する。怒ってばかりでは、学生はついてこないと分かったからだという。
 スポーツにおける「気合い」や「根性」は全面的に否定しないが、「失敗を責めるのではなく、選手を褒めて伸ばす方法」に変えたのだそうだ。


 武田さんの専門分野であるカウンセリングに関する著書の中に、寒さの中を歩いている旅人のオーバーを脱がそうとするイソップ寓話「北風と太陽」を引き合いに出し、物事に対して厳罰で臨む姿勢と、寛容に対応する姿勢についての記述がある。


 「相手の話を真剣に聞く大切さ」と「話を聞いてもらうありがたさ」という項で、カウンセラーが相手の話を真剣に聞くことで、相談者は心を開き安心感を得るという。


 25年にわたり関学大を指導してきた鳥内秀晃監督は、新チーム結成後学生一人一人と面談し「君はどんな人間になるのか」と問うそうだ。
 監督と学生の距離は、あまり近すぎてもいけないが「ボスが自分の話に耳を傾けてくれた」という思いは、目標達成に向けた大きな励みになる。


 「相手の悪いところ、間違っているところを直そうと説教する強引な『北風流』は、ほとんどの場合好結果を生まない」
 示唆に富んだ「武田先生」の言葉を、自戒の念を込めて胸に刻みたい。(編集長・宍戸博昭)

【写真】関学大監督時代の思い出を語る武田建さん