学生時代、鬼監督を頂点とする縦社会で過ごしてきた我が身を振り返ると、最近のスポーツ界で好成績を収めている大学の体育会運動部の監督の指導法は、とても新鮮だ。いまさらながらそう思う。
 帝京大ラグビー部を8年連続で大学日本一に導いた岩出雅之監督は、その代表的な存在である。


 岩出監督は、日体大時代に全国大学選手権で優勝した経験を持つ。指導者になって、自らの体験を基に、厳しさを前面に出した指導を続けていた。しかし、好結果には結びつかなかったそうだ。
 そうした中でたどり着いたのが「破壊と創造」であり「成長するためには、学生に考え続けさせる必要がある」だった。変わる学生気質。時代の流れもある。


 「教えるのではなく、考えさせる」。それは、監督の顔色をうかがい「一を聞いて十を知ろう」とするのではなく、指導者と学生の密なコミュニケーションの上に成り立っている。
 もちろん、そこには日本一を狙うチームとしての規律も存在する。


 試行錯誤を続ける学生を、遠回りしてもいいからゴールに導く。監督は当然答えを知っている。結論が出たら、分かりやすい言葉で説明する。
 それが選手にとって、自分の殻を破りその後の人生のよりどころになるような、印象的で感動的な言葉であれば言うことなしだ。


 岩出さんがまず破壊したのは、体育会特有の上下関係。帝京大では、練習後の後片付けなどの雑用は上級生の仕事になっている。かつての京大アメリカンフットボール部も、同じような環境にあったと記憶している。
 風通しのいい組織は、必ず学生の成長につながる。そう信じる監督の下で、選手はさまざまなアイデアを生み出し「勝てるチーム」が出来上がる。


 伝統の箱根駅伝で総合3連覇を達成した青学大の原晋監督も、選手間のコミュニケーションを重視するなど、独自の指導法で快挙を成し遂げた。
 傑出した指導者は「言葉の大切さ」を知っている。思い返せば、大学時代に師事した鬼監督は、名うての「言葉の使い手」だった。(編集長・宍戸博昭)

【写真】ラグビーの全国大学選手権決勝を控え、岩出監督の話を聞く帝京大の亀井主将(前列左から2人目)ら=東京都日野市