「実は肺がんの手術をしましてね、夏合宿には参加できなかったんです。大事な時期に僕が失速してしまい、本当に申し訳ないと思っています」


 今春、立教大のシニアアドバイザーに就任した水野彌一前京大監督から、衝撃的な話を聞いたのは9月4日、早大とのリーグ初戦の試合前だった。
 日本のアメリカンフットボールのルーツ校である「ラッシャーズ」に請われて、名門の再建を託された水野さんは、長期間チームを離れたことを残念がった。


 11月26日に東京・アミノバイタルフィールドで行われた日体大との最終戦。水野さんは、スタンド上部の「スポッター席」で選手の動きを見守った。
 試合は16―6で勝利。今季、関東1部TOP8に復帰した立教大は、4連敗からの3連勝でシーズンを終えた。


 7月に続いて9月にも手術を受けた。「肺の四分の一を取ったので、階段を上り下りするのが少ししんどいが、体調はいい」と笑いながら話す水野さんに、秋のシーズンを振り返ってもらった。


 「(後半の3連勝は)余分なことを考えんと、素直にフットボールをした結果。楽して勝とうとか、足払いでも掛けて勝とうという根性を捨てて、自分たちのフットボールをしようという姿勢がよかった。関東はどんぐりの背比べ。日体大は早稲田をあわやというところまで追い詰めて、中央は日大に勝った。面白いリーグ。ただ、関西の関学のような(お手本になる)チームがない。彼ら(関学)は大したもんですな」


 5分足らずの立ち話で、示唆に富んだ言葉がすらすらと出てくる。独特の「水野節」は、いつ聞いても腑に落ちる。


 京大の監督時代、苦しい台所事情でライバル関学に立ち向かっていった。「病院食はまずくてこりごりです」。76歳の「知将」の情熱は、まだまだ衰えていないと見た。(宍戸博昭)

【写真】日体大とのリーグ最終戦をスポッター席から見守る立教大シニアアドバイザー水野彌一さん=撮影:seesway