ボールを持つと、何かが起こりそうでワクワクする。慶応大学の主将でエースRBの李卓選手である。
 ノーブルな顔立ちと優しい語り口とは対照的に、そのプレースタイルはどう猛で荒々しい。タックラーをはじき飛ばし、力強く前進する。他の選手とは、明らかに搭載している〝エンジン〟が違う。


 愛知県の南山高校から慶応に進んだ。1年時から主力として活躍。昨年の世界選手権では、学生でただ一人日本代表に選ばれた。
 大学入学と同時に就任した、リクルート(現オービック)時代に日本一を経験している、デービッド・スタント・ヘッドコーチとの運命的な出会いもあった。


 迎えた最終学年。チームは5戦全勝で、法政大学とともに関東学生リーグTOP8の先頭を走っている。
 「プレーでチームを引っ張り、さらにキャプテンとしてリーダーシップを発揮するのは難しい。最初は両方をやろうとして失敗した。今は、主将であると同時に一選手であり、自分のやるべき仕事をしっかりやることが、チームのためにもなると思っている」
 試行錯誤を重ねて導き出した、李選手なりの「リーダー論」だ。


 自らの走りで3TDをたたき出し勝利した、宿命のライバル早稲田大学との試合後のハドル。李選手はチームメートを前に「泥臭く」という言葉を何度も繰り返した。
 スマートさが売りの校風にはおよそ似合わない三文字が、今年の「ユニコーンズ」のキーワードだという。


 甲子園ボウル初代王者の慶応が、最後に出場したのは1950年の第5回大会。66年ぶりの大舞台を踏むためには、強敵の日本大学と法政を倒さなければならない。


 「泥臭く戦い勝利を積み重ねることが、チームとしてのプライドにつながる。メンタル面の強い、これまでとは違うユニコーンズを見せたい」
 関東では久しぶりに現れた本格派のスターRBに率いられた「若き血に燃ゆる者」には今、「勢い」という何よりの武器がある。(編集長・宍戸博昭)

【写真】早稲田戦の後、スタントHCの話を聞く慶応の李卓主将=10月30日・富士通スタジアム川崎