同じポジションに、持ち味が違う優秀な選手を複数抱えている。さて、どうするか。監督としては迷うところである。


 1970年代後半、日大にはタイプの違うエース級QBが二人いた。ランに切れ味がある金井義明と、2年後輩で抜群のパッシング能力を持つ鈴木隆之。お家芸の「ショットガン隊形」からの攻撃が、対戦相手を翻弄した時代である。


 当時の日大・篠竹幹夫監督の答えは明解だった。二人のQBを同時にフィールドへ送り込む「ドラゴンフライ・フォーメーション」(別名・ショットガン7)を考案し、実践した。
 「ドラゴンフライ」はコンセプトこそ違うが、今NFLでも主流になっているスプレッド隊形の一つである「ピストル・フォーメーション」に酷似している。


 パス一辺倒のオフェンスは、いつか手詰まりになる。金井のランで相手守備を引きつけ、機を見て鈴木がパスを決める。めりはりが利いた「闘将」の戦術は理にかなっていた。


 ただ、選手起用には情実が絡むことがままある。「実力はあるけれど、自己中心でチームの戦術に合わない」「ビッグプレーは期待できないが、大きなミスもしない」
 組織の「和」にも配慮しなければならない監督は、悩むところである。


 「泣いて馬謖(ばしょく)を切る」。篠竹監督は、「三国志」の英雄・諸葛孔明の言葉をよく引用していた。
 いくら目をかけていた部下であっても、全体の規律のためには、リーダーは感情や縁故に流されては勝ち抜けないという故事である。


 秋も深まり、シーズンはいよいよ後半戦。さまざまな局面での監督の判断が勝敗に直結する季節が、今年もまたやって来た。(編集長・宍戸博昭)

【写真】1978年の甲子園ボウル、得意のランで関学大守備陣を翻弄した日大QB金井=「毎日甲子園ボウル70回の軌跡」から