スポーツの世界でよく見られる「胴上げ」は、日本独特の〝風習〟らしい。プロ野球などでも、優勝決定シーンのハイライトになっている。
 初めてこの「日本流」を見た外国人の多くは、その光景に驚き感激する。起源については諸説あるが、胴上げは日本が生んだ傑作なのだと思う。


 人生で一度だけ胴上げされたことがある。2連覇を果たした大学4年時の甲子園ボウル。表彰式の後に監督、コーチに続いて自然発生的に4年生の胴上げが始まった。あの時に見た甲子園球場の空の色は、今でも鮮明に覚えている。
 苦労をともにしてきた仲間と喜びを分かち合う。勝利という形で全てが報われた瞬間、その輪に加わった経験は生涯の宝物になる。


 何度か目撃した感動的な胴上げの中で、印象に残っているのは1992年の甲子園ボウルだ。
 87年の優勝を最後に低迷していた京大が、法大を17―7下して5年ぶりに学生王座を奪回した試合である。


 当時の主将・里勝典さんは、水野彌一監督を慕って神戸大を中退。21歳で京大に入り直した異色の経歴の持ち主だった。
 168センチ、75キロの里さんは、選手としての才能には恵まれなかったが、卓越したリーダーシップで「ギャングスターズ」を立て直した。


 あえて嫌われ役を買って出て、京大らしい硬派のチームを作り上げた小柄なキャプテンは、誰よりも先に仲間の手で宙に舞った。人の心を揺さぶる胴上げの背景には、それに見合ったストーリーがあるものだ。


 10月に入ると、学生リーグは地域によっては早くも大詰めを迎える。今年もどんなドラマが生まれるのか。できる限り現場に足を運び、見届けたいと思っている。(編集長・宍戸博昭)

【写真】1979年の甲子園ボウルで2連覇を果たし、学生に胴上げされる日大の篠竹幹夫監督=「毎日甲子園ボウル70回の軌跡」から