どこか寂しそうだった。今季から、日本のアメリカンフットボールの「ルーツ校」立教大のシニアアドバーザーに就任した水野彌一前京大監督は、いつになく元気がなかった。


 関東学生リーグTOP8に復帰した立教大は、初戦で早大に0―38と完敗した。水野さんは4月の正式就任を待たず、3月から京都を離れ埼玉県富士見市のグラウンドで指導に当たってきた。手応えはあったという。


 しかし7月に体調を崩し、8月の夏合宿では満足な指導ができなかった。「僕が失速してしまったので…」。学生や監督、コーチに申し訳ないという思いが、その表情から読み取れた。


 京大を6度の学生日本一に導いた、変わることのない「水野イズム」を注入された「新生ラッシャーズ」には、OBだけでなくファンも期待した。だが、それはカリスマ指導者といえども簡単な仕事ではなかったようだ。


 厳然と横たわる世代ギャップ。心に響く魔法のようなひと言で、たちまち選手をやる気にさせてしまう言葉の使い手も、この半年は人心掌握に苦戦した。時間が足りなかった。


 リオデジャネイロ五輪で、日本のシンクロナイズドスイミングに銅メダルをもたらした井村雅代監督と水野さんの人間育成理論は、驚くほど共通点が多い。
 「褒めるというのは、それだけやったら上等という意味。叱るというのは、もっとできるのになぜやらんということ。どっちが選手の人格を評価しているのか考えてほしい」


 ラグビーのワールドカップで日本代表を率い、世界をあっと言わせたエディー・ジョーンズ氏に触発されて、慣れない関東に単身でやって来た。
 「理屈が先に立つようなフットボールは好きではない」。秋のリーグ戦はあと6試合残っている。(編集長・宍戸博昭)

【写真】早大との初戦でサイドラインから戦況を見つめる水野彌一さん=撮影:seesway