立教大のアドバイザーに就任した、水野彌一前京大監督は不機嫌だった。いつもなら気さくに応じてくれる雑談もそこそこに、手にしたノートに気がついたことをいくつかメモすると、さっさと会場を後にした。


 5月22日、東京・アミノバイタルフィールドで行われた明大との交流戦。結果は17―32だった。
 第3クオーターまで17―17の同点。秋は関東学生リーグ1部TOP8で対戦する強豪と互角に渡り合ったが、第4クオーターに入ってスピード負けし15点を失った。
 4ターンオーバーを奪いながらの敗戦が、名将を不機嫌にさせていた。


 肩書はアドバイザーだが、京都から埼玉の志木に生活の拠点を移し、毎日グラウンドで学生を指導している。実質のコーチである。
 コーチの最大の仕事は「チームを勝たせること」である。善戦しても、負けてしまっては何の意味もない。


 ただ、水野さんの場合はその「言葉の力」で、どこまで「ラッシャーズ」の選手を啓蒙できるかに周囲は注目する。
 学生とはまだ3カ月足らずの付き合いだが、世代ギャップを埋める作業は思いの外大変なのかもしれない。


 サイドラインでの存在感は相変わらず抜群だ。身ぶり手ぶりを交えて、フィールドの選手に指示を与える。
 人材に恵まれた年ばかりではなかった京大で、知恵を絞り厳しい練習で選手を鍛え上げて強い相手に対抗してきた指導者の手腕には、関係者だけでなく多くのスポーツファンが期待している。


 長く低迷していたチームを再生するのは簡単ではない。しかし、6月で76歳になる水野さんに気力、体力の衰えは感じられない。
 春のシーズンで得た教訓を秋にどう生かすのか。カリスマの引き出しをのぞいてみたい気がする。(編集長・宍戸博昭)

【写真】サイドラインから選手に指示を与える水野さん(左)と立教大の市瀬ヘッドコーチ=撮影:seesway、5月22日・アミノバイタルフィールド