篠竹幹夫元日大監督が存命の頃、「日大の歴代QBの中で誰が一番ですか?」という質問をしたことがある。
 篠竹さんはこの時3人の名前を挙げた。いずれもエースナンバー「10」をつけて、チームに勝利をもたらした名選手だが、ここではあえて個人名を控えておく。


 一人目は投げてよし、走ってよし。フェイクなどの技術も卓越していて「天才」と呼ばれた逸材だ。二人目は抜群の運動能力で相手の守備を蹂躙した、文字通りの「アスリートQB」。そしてもう一人は、鈍足だがそれを補ってあまりあるパッシング能力を持っていた。
 3人はそれぞれタイプこそ違うが、ここぞという場面でハードヒットを覚悟でダウンフィールドを駆け上がり、ピンチを切り抜けてきた。戦術を超えた浪花節が似合う「フェニックス」のQBは、「心意気」を示すことでチームを引っ張ってきたのである。


 5月1日、神戸・王子スタジアムで行われた関学大―日大の定期戦は、関学大が23―10で勝った。
 日大の「10番」、QB高橋遼平選手の記録は38回投げて23回成功。トータル191ヤード1TD、2インターセプトだった。


 「ぜんぜんパスが通らなくて、かといって個人で打開する能力もない。自分の実力を知った」。試合後、流れる汗をぬぐおうともせず、高橋選手は真摯に話してくれた。


 高橋選手は2013年の甲子園ボウルで、1年生ながら先発しその才能をファンの前で披露した。しかし、その後は伸び悩んでいる。
 「(控えだった)去年は、サイドラインから試合を見ることが多かったが、いろいろ勉強できた」。下積みを経験して迎えた最終学年。ライバルとの春の2戦目で行き詰まり、副将という重責も担い前途は多難だ。


 ただ、現実を直視し、さあこれからどうするという分析能力は高いとみる。168センチ、73キロ。体格のハンディを克服するべく手だてを、彼なら見つけるのではないか。そんな気がする。
 6月には大学日本代表の一員としてメキシコに遠征する。国際試合を経験することでしか得られないものもある。頑張れ高橋選手!(編集長・宍戸博昭)

【写真】関学大との定期戦でパスを投げる日大のエースQB高橋遼平選手=撮影:山岡丈士、5月1日・王子スタジアム