「名監督」と呼ばれる指導者は、インパクトの強い独特の言葉で自らの考え方を示し、選手の心をつかむ。
 立教大の「シニアアドバイザー」に就任した前京大監督の水野彌一さんは、まさにそういう人だ。


 練習では、激しい当たりを強制する一方で「根性でタックルをするな」と水野さんは教える。
 現状の力量では対処できない場面に遭遇したとき、蛮勇を振るって体を投げ出すなどのタックルはけがにつながる。それは勇気のあるプレーではなく無謀なプレーであると選手に説く。


 「今の自分のレベルに合ったプレーをすること。それ以上のプレーを望むなら、自分のレベルを上げる。無理をしたらあかん。根性でタックルをするなというのは、そういう意味や」


 選手のけがは、チーム作りの計画を狂わせる。それが主力選手ならなおさらだ。
 京大では、一時期を除いて常に苦しい台所事情でやり繰りしてきた指導者のポリシーは、実に明解だ。


 「低く」「速く」「強く」。スイートスポットをかなり低い位置に設定したお手製のスレッドダミーを京都の自宅から持ち込み、当たりの基本を徹底的にたたき込む。


 「一つのことを1万回」。学生に激しさを求める知将の教えがチームに浸透したとき、復活を目指す伝統校に一点の光が見えてくるはずだ。(編集長・宍戸博昭) 

【写真】埼玉県富士見市にある立教大グラウンド