プロ野球阪急(現オリックス)の監督だった上田利治さんは、記者として取材した中で、印象に残る一人だ。
 選手としては目立った実績を残せなかったが、指揮官としての手腕は超一流だった。筋金入りのプロの指導者である。


 春のキャンプでは誰よりも精力的に動き、昼食の時間も惜しむように出された弁当を一気に平らげ、食べながら記者の質問に答える。その時は「せわしない人だな」と思った。
 甥御さんが、関学大でアメリカンフットボール部に所属していたこともあり「アメリカン」が大好きで、逆に質問されることもあった。甲子園ボウルもよく観戦していた。


 選手の結婚式には出席しなかった。「自分はいつクビになって、他のチームの監督になるか分からないし、選手も移籍して敵になる可能性があるから」というのがその理由だ。
 采配は、徹底して勝負にこだわった。情実を排除した独自の理論と戦術で、「ブレーブス」をパ・リーグの強豪に育て上げた。


 「欲の強い人間は個性的で扱いにくいが、そうした選手ほど大きく育つ。監督にとって素直な選手は、むしろいざというとき不安で使いにくい」
 人間を見極める確かな目を養う一方で、自分をさらけ出すことで、選手との信頼関係を築く努力も怠らなかった。


 読書家としても知られ、上田さんに薦められて手に取った書物は少なくない。
 フットボールのように分業制が進むプロ野球が、3月25日に開幕した。上田さんならどんな采配をするだろう。「球春」を迎え、ふとそんなことを思った。(編集長・宍戸博昭)

【写真】阪急ブレーブス監督時代の上田利治さん