リオデジャネイロ五輪への出場権を逃した、サッカー女子日本代表の戦いぶりを見て、監督と選手の間に、それまでの「なでしこジャパン」とは明らかに違う空気が流れていたように感じた。


 それは同時に「生き物」であるチームを長期間にわたって統率し、一定のレベルを保つ指揮官としての在り方の難しさを示しているようにも思えた。


 関学大アメリカンフットボール部の元監督である武田建さんは、監督就任当初は怒ってばかりいるコーチだったそうだが、ある時期から選手を褒めて伸ばすスタイルに変えたという。
 心理学者としても名高い武田先生ですら、指導者として日々試行錯誤を重ねていたのである。人にものを教え、組織をまとめるという作業は、事ほどさように大変だということなのだろう。


 アメリカンフットボールでは、レシーバーとディフェンダーの間隔を「クッション」という。この距離を間違えると、守備側はとても痛い目に遭う。
 状況によって、近づきすぎても離れすぎてもいけないからだ。


 実績のある「名監督」が、晩年苦労するのは選手との世代のギャップである。
 それまでのやり方を継続するのか、それとも相手に歩み寄るのか。特に毎年選手が入れ替わる学生スポーツでは、その辺りの対応が難しい。


 春と秋の「2シーズン制」とも言われる日本のアメリカンフットボール界。
 各チームが新しい陣容で臨む春は、首脳陣と選手がお互いの「クッション」を見極める季節でもある。(編集長・宍戸博昭)

【写真】現在も関学高等部で指導する元関学大監督の武田建さん