シューズに新しい紐を通す。新品のソックスは汗を吸いにくく、シューズの中で滑るで、一度水にくぐらせる。ヘルメットなどの防具の点検をし、ユニホームを丁寧にたたむ。


 今は「ホテル」になった芦屋にある「旅館」の和室は、膝に故障を抱える身にはつらかった。でも、決戦前夜の“儀式”に没頭していると、不思議と気持ちが落ち着いた。


 試合前日の夕食は「勝つ」にあやかってトンカツを食べる。不思議と力がわいてくるような錯覚に陥った。
 学生から「鬼」と恐れられた監督は、関西に来るとなぜか関西弁で話す。取って付けたようなそのイントネーションに、思わず笑いそうになる。鬼は時々、お茶目な一面を見せた。


 キックオフ。そんなに激しく動いていないのに、息苦しさを覚える。アルプススタンドから聞こえてくる、相手チームに対する応援に圧倒され、身震いする。
 「そう、ここは完全に敵地なのだ」。そう思うと、覚悟が決まった。


 12月13日の全日本大学選手権決勝「甲子園ボウル」は、今回70回の節目を迎える。対戦するのは関東代表の早大と、関西代表の立命大。両校の対戦は5年ぶり3度目だ。


 そういえば、球場のマウンドを削り芝生が敷き詰められたフィールドで試合が行われるようになったのは、5年前のこのカードからだった。


 阪神タイガースの本拠地、春と夏の高校野球、そして冬はアメリカンフットボールの「聖地」としての顔を持つのが甲子園球場である。
 ともに臙脂(えんじ)がスクールカラーの「ビッグベアーズ」と「パンサーズ」が、大学日本一を懸けた大一番は、13日午後1時5分にキックオフとなる。(編集長・宍戸博昭)

【写真】「甲子園ボウル」は、2010年の第65回大会からマウンドを削り芝生が敷き詰められた