静岡県にある清水国際高校アメリカンフットボール部の上松明(じょうまつ・あきら)監督を訪れたのは去年の10月だった。末期の肺がんと闘う上松監督は、秋の関東大会に向けてナイター照明の下で選手を指導していた。


 初戦の相手は、日体大の大先輩が監督を務める東京の強豪・駒場学園高校。「駒場に勝って、恩返しがしたい」と話していた上松監督率いる「シャークス」は、東京の駒沢第二球技場で行われた試合で見事勝利する。
 続く準決勝の相手は早大学院。アイデアマンの指揮官が授けた秘策が功を奏し、関東の王者をあと一歩のところまで追い詰めたが、22―28で惜敗した。


 攻撃で体の大きな守備ラインの選手をモーションさせ、アタッキングポイントで強烈なブロックをしてゲインを重ねる。奇抜な戦術は、会場にいた関係者の度肝を抜いた。
 ボールキャリアが何人も入れ替わる「トリプルリバース」は、昨シーズンの全国高校選手権決勝(クリスマスボウル)で優勝した名門・関西学院も採用していた。


 早大学院との試合後、体調を崩した上松監督は入退院を繰り返し、長い間苦しい治療に耐えてきた。
 清水国際は9月27日、秋のシーズン初戦となる静岡県大会で浜松開誠館高校と対戦する。「痛く、気持ち悪い入院を乗り越えました。今日退院します」。上松監督はその2日前に、SNSで退院を報告した。


 退院したばかりで、27日の試合には立ち会えない可能性が高い。それでも、送ったメッセージの返信には、こう書かれていた。「練習には参加できませんが、今日は生徒に気合いを入れに行く予定です」。短い文面から、やる気と教え子への熱い思いが伝わってきた。(編集長・宍戸博昭)

【写真】昨年10月、インタビューに答える清水国際高校の上松明監督