コーチという立場に身を置いた経験がないので、その大変さは実感したことがない。職業柄、さまざまなスポーツの指導者に会う機会がある。プロスポーツなら、チームの成績がそのままコーチの実績として評価される。勝てばいいが、負けが続けば解任の憂き目に遭う。シビアな商売である。


 米オハイオ州で開催されている世界選手権で、日本代表が決勝に進出した。優勝を争う相手は本場米国。3大会ぶりの王座奪回を目指す日本にとって、厚くて高い壁である。
 チームを率いる森清之ヘッドコーチ(HC=LIXIL)、守備を担当する大橋誠コーチ(オービック)をはじめ、日本のトップに位置するXリーグには、プロのコーチが少なくない。彼らの使命は、チームを勝たせること。この一点に尽きる。


 代表でのコーチ経験が豊富な森、大橋両氏は大会期間中だけでなく、準備段階を含めてかなりの期間自チームを離れることになる。サッカーの日本代表のように、監督、コーチは専従ではなく、練習時間も極端に限られているから苦労は多い。
 恵まれているとは言えない環境で臨んだ、日本代表の5度目の世界選手権。連戦で疲弊する選手の情報を耳にすると、ますます応援したくなるのが人情だ。


 残念ながら新聞、テレビなど国内メディアの露出度は高くない。現地で取材を展開する特派員からの情報と、不鮮明なインターネットでのライブ放送で見ることができる「JAPAN」の健闘ぶりは称賛に値するだけに、申し訳ない気持ちになる。
 快勝した準決勝のメキシコ戦。時々フリーズするネット放送の画面に、森HCの厳しい表情が映った。記者会見で選手、スタッフの仕事ぶりをたたえた指揮官にとって、本当の勝負はこれから。それはご本人が一番よく分かっているはずだ。


 米国との決戦は、日本時間19日の午前8時にキックオフの予定。「TURNOVER」のコラムニスト中村多聞さんに倣って、今回はこの言葉で締めくくる。頑張れニッポン!(編集長・宍戸博昭)

【写真】メキシコ戦で厳しい表情で審判に説明を求める日本代表・森ヘッドコーチ=撮影:Yosei Kozano