相撲の四つに組んで「押してみろ」と言われた。渾身の力を込めてみたものの、岩のように動かない。
命じた人は、25歳年上の40代半ばの男盛り。とはいえ、こちらも力自慢ではなかったけれど、それなりに鍛えた体には自信を持っていたから、正直ショックだった。


 「プライドとは、命がけで守るもの」と教えられた。どんな状況でも、無様な姿をさらすなかれ。男は常に堂々としていなければいけない。試合に臨む前に、よく話してくれた。


 「(相手の)うんこがはみ出るぐらい、激しく当たってみろよ」。タックルをかわされたり当たり負けすると、野太い声で叱責された。
 力負けして仰向けに倒れようものなら、「恥を知れ!」と怒鳴られた。


 「常に最悪の事態を想定しておけ」。どんな相手に対しても気を抜かない、おごらない、侮らない。
準備を怠ることなく試合当日を迎え、全てを出し尽くす義務が、このチームの人間にはあると諭された。


 「小学生の子供だって、その子が命がけで向かってきたら大の大人もたじたじになる。要するにハートなんだよ、人間は」。相手をなめてかかると、立て直すのに苦労する。待っているのは、惨めな敗北だけ。そうなってからでは遅いと恩師は言った。


 7月10日は、数々の名言を残した篠竹幹夫・前日大監督の命日である。
「打倒米国」を本気で目指した闘将が天に召されて9年。アメリカンフットボールの世界選手権が日本時間の10日、本場米国の「聖地」オハイオ州カントンで開幕した。(編集長・宍戸博昭)

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