4月27日付の日本経済新聞の朝刊に掲載された商社の広告にハッとした。1ページを割いた大きな似顔絵のモデルは、この春伊藤忠商事に入社した鷺野聡さんだった。
 昨年度の関学大ファイターズの主将、RBとしてチームを4年連続大学日本一に導き、年間最優秀選手に贈られる「ミルズ杯」を受賞した人である。


 似顔絵の下には、本人のメッセージとしてこう書かれていた。
 「小学生の頃は、ケンカさえしたことがなかった。大学時代は、アメフト部のキャプテンでランニングバック。5年後の自分、どうしてるんでしょうね」。短い文章で、見事に自分を表現していた。


 鷺野さんが3年生だった2014年1月3日のライスボウル。オービックに敗れた試合後、彼は「4年生を勝たせてあげられなかったことが、何より悔しい」と大粒の涙を流した。その憔悴した姿を見て、質問はそれで打ち切った覚えがある。
 翌年、主将として東京ドームに戻って来た彼は、「負けた責任は自分にある」と下級生にわびた。リーダーとして、責任を一身に背負う姿は1年前よりたくましく見えた。


 3月に行われたプリンストン大を招いた「レガシーボウル」のレセプションで会った鷺野さんは、髪の毛が少し伸びて表情も柔らかくなっていた。
 大学フットボール界では孤高の存在になりつつある「ファイターズ」の牽引役として、一つのミッションを終えた安堵感のようなものがにじんでいた。


 どんな時も冷静に組織をまとめ上げてきた好漢が、社会人としての一歩を踏み出した。5年後はどうしているのか。本人だけでなく、周りも楽しみである。(編集長・宍戸博昭)

【写真】日本経済新聞の一面広告で紹介された昨年度の関学大主将・鷺野聡さん