「験を担ぐ」とは、以前に良い結果が出た行為と同じことをして、前途の吉兆をおしはかるという意味だそうだ。スポーツの世界でも、よく聞く言葉である。
 学生時代、大事な試合前に必ずする「ルーティン」がいくつかあった。前夜はトンカツを食べる。これは文字通り「勝つ」を意識したもの。学生が作るので味はいまひとつだったが、これを食べると何となく安心した記憶がある。
 相手チームのフォーメーションが書かれた紙が、食堂やトイレといった合宿所のいたるところに貼られる。試合当日にはその紙を破り捨て、中庭で燃やす。炎を見つめていると、不思議と気持ちが落ち着いた。
 朝食のおかずは、焼き鮭と塩昆布に梅干し。かなりの粗食だが、「腹いっぱいで戦場に出て、見苦しい姿をさらすなかれ」という監督の教えをそのままメニューに反映した。
 玄関で体に塩を振り、縁起物の「あたりめ」をかじって出陣。「あたりめ」は「するめ」と同じだが、昔の商人が「する」は「損をする」という意味の「する」に似ていたので、縁起を担いで「あたり」を使ったのだそうだ。
 もっとも、キックオフは大抵午後なのでお腹がすく。試合前、会場近くでそれなりに栄養補給をしていたことは、もちろん監督はお見通しだった。(編集長・宍戸博昭)

【写真】縁起物の「あたりめ」