選抜高校野球が甲子園球場で開催中である。「花冷え」とはよく言ったもので、桜が咲くこの時期の甲子園は寒い。バックネット裏の記者席では毛布が必需品で、凍えながら原稿を書いていた。
 駆け出しのころは、今のようにパソコンで記事を送るシステムがまだなく、手書きの原稿をファクスで送信していた。デスクの手が入ると原稿用紙は真っ黒で、書き直しを命じられたケースは数知れない。飛び交う花粉に悩まされながら、必死でマス目を埋めていた。
 甲子園球場は甲子園ボウルの舞台という、もう一つの顔を持っている。球場長、阪神球団常務などの要職を歴任した、関学大アメリカンフットボール部OB竹田邦夫さんの著書「甲子園が育んだ プロ野球フロント魂」には、日本を代表するスタジアムを見守り続けた裏方さんの苦労が描かれている。
 3年生で攻撃ラインとして出場した、1970年の甲子園ボウルで優勝経験のある竹田さんは、阪神淡路大震災で開催が危ぶまれた1995年の選抜大会を、開催にこぎ着けた功労者である。「聖地」を誰よりも知り、そして愛した人物の半生が綴られた一冊は、読み手の心を揺さぶる。(編集長・宍戸博昭)

【写真】地震でひびが入り、修復工事が行われた甲子園球場のアルプススタンド=1995年