「京大OB若林正敏さんとフィンランドアメフト情報」

 日本のアメリカンフットボールは秋のシーズンが始まります。社会人そして学生の皆様が実りあるシーズンを送られることを期待しています。
 前回触れましたノジマ相模原ライズは、今年はミシガン大学のQBとWRを補強して「台風の目」とされていますが、初戦で強豪オービック・シーガルズと対戦します。


 2年前にスウェーデンで開催された大学世界選手権で知り合った、ライズのQB荒木裕一朗選手からは「QBデヴィン・ガードナー選手の加入でとてもいい刺激、影響を受けています。これを糧に頑張ります」という力強いメッセージをいただきました。


 今回、第1回目にご紹介したフィンランド在住の京都大学OB若林正敏さんから、フィンランドリーグに関する興味深い情報をいただきましたのでご紹介させていただきます。
 若林さんが在籍されていた当時の京大は、「怪物」と言われたQB東海辰弥さんを擁し1986、87年の甲子園ボウルで日大、ライスボウルでレナウンに勝利して2年連続の日本一に輝いています。


 若林さんは京大卒業後にサンスター・ファイニーズ(現在のエレコム神戸ファイニーズ)でプレーされ、社会人リーグの決勝戦も経験されました。その後一旦アメフトから離れられたのですが、44歳から再びプレーしています。

 若林さんは昨年冬からフィンランドのポリという都市に仕事の関係で駐在され、観戦できるアメフトリーグを探していたところ、ポリ・ベアーズというチームの存在を知りました。
 最初はただ試合を観戦するつもりだったとのことですが、フィンランドでも体を動かしたいと考え、会社の同僚を通じてベアーズのヘッドコーチにコンタクトを取り、2015年のシーズン開幕1カ月前にチームに合流しました。

 フィンランドリーグは、トップリーグ(Vaahteraliiga)7チーム、1部5チーム、2部5チーム、3部9チーム、4部7チーム、女子はトップリーグ 8チーム、1部9チーム、2部3チームで構成されています。


 全リーグの試合結果が一両日中に協会サイトにアップされ、ニュース発信も頻繁で、しっかりと運営されているとの印象を若林さんは持たれています。(フィンランドアメフト協会サイト http://www.sajl.fi/

 ポリ・ベアーズは1982年に創部し82年、87~88年、2003~04年はトップリーグに所属していましたが、15年は3部リーグ所属でした。
 3部リーグのチームは外国人選手の招聘や補強をすることができないため、若林さんがプレー目的でなく仕事でフィンランドへ来たという証明書を提出した後、日本協会からフィンランドの協会への正式な移籍手続きを済ませ、開幕直前に移籍が成立しました。

 チームの選手はほとんどが20代で、30代は少数。体は日本人より一回り大きくて重い印象で、体重85キロの若林さんでもご自身が細身に思えたとのことです。
 京大時代から続けているパントとフィールドゴールの実力が認められ、パントはレギュラー、FGは控えでプレーすることになりました。日本ではタイトエンドでしたが、こちらではレシーバーで、ワイドもスロットも両方練習されました。


 そして15年5月のリーグ開幕戦、若いレシーバーが多かったこともあり、若林さんは経験を買われて先発で出場しました。
 しかしその試合の代1Qのパス捕球時に、LBから潰されるようにタックルを受け左肩を脱臼。その日はそれ以降試合には出られず、フィンランド駐在後初の病院受診を経験されました。


 週明けは肩を吊った状態での出勤となり、周囲の反応が気になったそうですが、もともとスポーツに理解があり、年齢はあまり気にしないフィンランドの同僚に格好の話のネタを提供しただけで、皆復帰を応援してくれたとのことです。


 2戦目、3戦目は大事をとってキッカー、パンターとして出場し、4戦目からレシーバーとして復帰されました。
 京大時代に肩などを負傷しても、水野彌一監督の指示でキッカーとして試合に出場し続けた思い出がよみがえってきたそうです。

 「シーズン8試合のうち4試合が遠征試合で、大型バスに全員で乗り込んで片道3時間から7時間の移動でした。バスの中の雰囲気はさながら修学旅行のようで、選手同士の他愛のない会話でお互いをより知ることでき、自然にチームとしてのまとまりが強まるよい機会となりました。また、シーズン中に一度だけ泊まりがけの遠征をヘッドコーチが企画し、試合後のサウナと朝までの飲み会でチームの絆はさらに強まりました」と若林さんは遠征について語っています。
 15年シーズン、ポリ・ベアーズは3部で見事優勝し、翌2016年は2部リーグに昇格となりました。

 「フィンランドへは駐在で来ていますが、ライフアンドワークバランスを大切にするフィンランド人からすると、日本から来た私が趣味もなく仕事だけをすることは違和感のあることです。私が仕事をしながらスポーツも愛しアメフトを楽しんでいる姿を見て、会社の同僚も私を自分達の仲間だと感じてくれているようです。また、会社以外の多くの若者やコーチ、スタッフ、OBの方々と知り合いになることで、会社以外でのフィンランド人と社会を知る機会が広がり、ここでの仕事にとても良い影響があると思っています」と若林さんは話しています。
 若林さんの2部リーグでの16年シーズンに関しては次回ご報告いたします。

 さて、16年の我がウプサラ86ersのシーズンですが、4月は開幕2連敗の後、初勝利を挙げました。5月に入ってチームの状態は上向きとなり、3連勝で成績を4勝2敗としました。


 この間、特筆すべきは対戦相手のストックホルム・ミーンマシーンズがオフェンスラインのガードの女性選手を出場させたことが挙げられます。
 彼女は女子のスウェーデン代表の巨漢選手で、女子トップリーグで常時プレーしていますが、男子トップリーグの試合に出場した二人目の女性選手になりました。


 このように、スウェーデンでは実力があれば女性でも男子リーグでの試合出場が認められます。また、その後私が帯同した15~17歳のスウェーデン代表候補の合同練習にも女性選手が一人参加して同じメニューをこなしていました。

 今季7試合目、5月28日のゲームはホームのウプサラで行われ、ここまで全勝のカールスタッド・クルセダーズと対戦しました。
 この試合、リーグ最強チームと我々の現在の実力は拮抗しているのかどうかが興味深い点でしたが、クルセダーズの攻撃力をまざまざと見せつけられました。


 前半は14―35、後半途中からは35点差をつけられてランニングクロック(時計を止めずに試合を早く終わらせるルール)となり、20―59の結果で敗戦となりました。
 86ersの収穫としては、三つのタッチダウンパスが3人のWRに決まったことが挙げられますが、オフェンス、ディフェンスどちらにおいても力の差を感じさせられる結果となりました。

 しかしながら、7試合終了時点での他チームの成績との兼ね合いで、プレーオフに進める7チーム中4位以内に入ることがほぼ確実となりました。そして、残りの3試合の結果で、最終順位とプレーオフでの対戦相手が決まります。

山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル
 日本、アメリカの病院の一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回大学世界選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

【写真】昨年のフィンランド―スウェーデン定期戦後の若林さん(右)と筆者=写真提供・山本慎治