「新チーム始動」


 2015年9月の決勝戦終了後から、ウプサラ86ersシニアチームはオフシーズンとなりました。そして、11月末に86ers組織全体の納会が開催され、私も出席しました。
 U―13からシニアチームまでの各チームのMVPなどの表彰式で私は「Helping hand award」という賞をいただき、表彰を受けました。


 「彼は、練習や試合にいつも参加しチームを助けてくれた」というセーデルベリ86ers会長のスピーチを、もしかして私のことかなと思いつつ聞いていたら、その後に私の名前が受賞者としてアナウンスされました。
 参加者の方々の温かい拍手の中ステージに上がり、会長から盾を受け取りました。私は受賞スピーチで「来年は86ersのシニアチームだけでなく、若い世代のチームの手助けもしたい」と話しました。このような形でチームから感謝の意を示してもらい、私の2015年シーズンは終了しました。


 シニアチームのMVPには、フィンランド戦でもスウェーデン代表としてプレーしていた42歳のヘンリク・グリーン選手が選ばれました。
 彼は代表戦の後に引退を表明し、16年からはディフェンスのコーチとしてチームに貢献することになりました。
 また、この納会で現在アメリカの大学でプレーしているスウェーデン人選手の講演がありました。朝から晩までの緻密なスケジュールの中、いかに勉学とスポーツを両立させているか、その苦労を知ることができました。


 アメリカの大学でアメリカンフットボールをプレーして活躍することは、アメリカ人のみならずアメリカ以外の国の選手にとっても、最高峰プロリーグNFLへの道を切り開く最良の道です。
 過去にNFLでプレーしたスウェーデン人選手もアメリカの大学でプレーしていました。キッカーのオーベ・ヨハンソン選手は、1977年にフィラデルフィア・イーグルスで2試合プレーしましたが、彼はアメリカの大学に在籍していた76年に69ヤードのフィールドゴールを成功させたという記録を持っています。
 また、89年にはアメリカの高校と大学でプレーしたキッカー、ビョルン・ニトモ選手がニューヨーク・ジャイアンツで1シーズンを通して活躍しました。


 日本からも、高校もしくは大学から本場アメリカに留学し、目覚ましい活躍をしている選手がいます。14年と16年の大学選手権の日本代表に選出された、ベイカー大学でプレーする神津大地選手をはじめ、日本代表クラスの選手もその中に含まれます。


 しかしながら、アメリカの短大でプレーした経歴を持ち、現在アメリカに留学している数人の選手とも交流がある「Jさん」(鈴木惇也さん)は、高額な報酬を要求する留学斡旋業者には注意を払う必要があると警笛を鳴らしています。
 これは海外留学一般にも当てはまることですが、自分の人生を左右する留学先を業者に委ねる場合は、業者選定も留学先の条件も含めて慎重に考える必要があります。もちろん、Jさんのように自分で留学先を探すという方法もあります。


 年が明けて16年1月3日、一時帰国していた私は、ライスボウルを東京ドームのスタンドから観戦しました。
 14年のウプサラでの大学世界選手権代表の何人かがパナソニックの主力選手としてプレーしていて、この晴れ舞台での活躍を見て非常にうれしく思いました。
 また、ハーフタイムには京都大学前監督、そしてウプサラでの日本代表監督も務められた水野彌一さんの殿堂入りの表彰式もありました。今年新たに立教大学での指導を開始された水野さんの情熱にはいつも敬意を表しております。


 16年のスウェーデントップリーグ「スーパーシリーズ」で、24年ぶりの優勝を目指す86ersの体制に大きな変化がありました。
 昨年86ersをプレーオフに導いたアメリカ人ヘッドコーチ(HC)は退任し、新しいアメリカ人HC兼オフェンスコーディネーター(OC)が1月半ばに決まりました。彼はNFLとCFL(カナダのプロリーグ)でプレーした経験があり、その後はCFL、アメリカの大学、カナダの高校と大学で主にオフェンスのコーチを30年間務めました。


 3月の半ばにその新HCは、屋内練習場でチームの選手、スタッフと初顔合わせをしました。私が彼に自己紹介してあいさつした時に、彼は30年前アメリカにコーチ留学に来ていた一人の日本人のことを懐かしそうに話し出しました。
 その方に関して名前と大学名で検索したところ、個人がほぼ特定できたので、メッセージを送り事情を説明しました。すると早速その方から、確かに私はそのHCと昔カリフォルニアの大学にコーチ留学した時に同室だった、というお返事をいただき、HCにも連絡を取ってくれました。


 次の練習で顔を合わせた時に、HCから「スウェーデンに来て最初の練習で、チームの日本人医師に30年音信がなかった日本人の旧友の話をしたら、その日のうちに彼からメッセージが来た。なんということだ。スウェーデンに来てよかった」と涙も流さんばかりに喜ばれました。このように新HCと旧友との交流が再開したことは、私からの就任祝いのプレゼントとなりました。


 NFLでのプレー経験のあるHCの体験談は刺激的でした。コーチ数人とのスポーツバーでの懇親会で「チーフスのトレーニングキャンプに招待されて参加してみると、ワイドレシーバーの練習には本当に多くの候補者が並んでいた。俺は数少ないアピールの機会を成功させて、無名の大学出身ながら競争に勝ってチーフスと契約し、NFLでプレーすることができたんだ」など、非常に興味深い話を聞かせてくれました。これからシーズンを通して、もっといろいろな話が聞けたらと期待しています。


山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル
 日本、アメリカの病院の一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回大学世界選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

【写真】ストックホルムのオリンピックスタジアムの正面入り口=写真提供・山本慎治