卒業式のシーズンです。3月も残すところあとわずか。4月のスタートが待ち遠しくもありますね。
 清里高原では春の訪れを告げるダンコウバイが咲き始めました。今年は雪が少なかったためか、枯れ草の大地もほのかな緑が見え隠れしています。


 長い間農家さんとお付き合いして、作物に対する哲学を学ばせて頂きました。特に稲作農家からはたくさん教えていただきましたが、この時期はお米の種(種籾といって、秋の収穫前に選りすぐりを採り、一冬農家に保管する)を発芽させる不安と期待が入り混じる時です。なんだか新しい生活をスタートさせる時と同じような気持ちです。


 スポーツとは縁遠いかもしれませんが、少しばかり関わらせていただいた米作りの記憶がよみがえってきました。
 種籾は収穫する前の稲穂をよく観察して、姿形の良いものを選びます。翌年、良い種になるための条件を満たしていなくてはなりません。


 そんな種籾を八ヶ岳の流水に十分さらして、環境を整えて一度に発芽させるのです。それは見事な仕事で、じっと種籾の具合を見つめる農家さんのまなざしは今でも忘れられません。
 4月、霜が降りないことを確認して種籾を苗床に下ろすと、まるで赤ちゃんを育てるような気持ちで毎日の対話を続け、一斉に苗床に芽を出す苗姿は、それは美しいものでした。


 その後も立派な苗を育てるため毎日の管理を欠かさず、ようやく田植えを迎えます。「苗半作」という言葉を初めて教わりました。
 大切かつ甘やかさずに育てた苗こそ、その年のお米の美味しさ、収量にかかわるのだそうです。人間の世界にも通じるものだと私は感じます。


 お米はアスリートの味方であることは周知の事実。活動のエネルギー源となるため、成長期の子どもや、エネルギー消費量の多いアスリート、また体力、筋力そして持久力向上のためのトレーニングを行っている場合には、エネルギー量に換算して不足のないよう食事からとることを心がけます。


 一日の消費エネルギーは大まかに基礎代謝量と活動時代謝量に分けられます。つまり、活動が活発なときほど、必要とするエネルギー量(食事からの摂取量)も違います。
 せっかく有効なトレーニングプログラムをこなしていても、摂取エネルギーが不足していれば筋力などの発達は望めません。そして、すぐに体重や筋力の数値として効果が表れるわけではないので、じっくり取り組むことが大切です。


 「食事はバランスよく」と言いますが、一つの目安としてエネルギー生産栄養素バランスというものがあります。
 エネルギー源となる三大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)が、食事全体のエネルギーに占める割合を表すもので、特別なトレーニング中(例えば、減量やグリコーゲンローディング期間など)でなければ炭水化物エネルギー比は50~65%が適切と言われています。
 また疲労回復を目的とする場合は、糖質(例えばご飯)にプラスたんぱく質などの栄養素を含む食品を選ぶことをお勧めします。


 八ヶ岳では米作りがスタートしています。夏に収穫を迎える早生品種は既に九州の方で田植えを終えたとか。日本の主食である米、アスリートの味方である米、天候に恵まれて農家を悩ませない年となりますように。


大柴 由紀(おおしば・ゆき)プロフィル
 管理栄養士。奈良女子大学食物学科卒業後、大阪市立環境科学研究所附設栄養専門学校で栄養士免許取得。1998年財団法人キープ協会入社。レストラン勤務の傍ら、料理に自然の恵みを表現するため、八ヶ岳の自然を大切に循環型農業で米や野菜を育てる農家との交流を深める。2000年7月キープ自然学校開校。アメリカンフットボールと出会う。公益財団法人キープ協会勤務。学校法人新宿調理師専門学校講師、日本ウエルネス学会常任理事、山梨県栄養士会理事を務めている。

【写真】発芽前の種籾