「テクニック編」
 ▽ボールを真っ直ぐの方向に蹴る(1)
 ここからはキッカーのテクニックについて説明しよう。キッカーにおけるPATおよびFGのテクニックを一言で言うと「ポイントに置かれた、いや正確には置かれるであろう楕円形ボールをゴールポストの方向に真っ直ぐ蹴る」ことである。
 さらに加えれば地面に対してできる限り垂直な縦回転が生じるように蹴ればボールの軌道は安定し力強い弾道でゴールポストを通過することができる。


 ポイントとはホールダーがボールを置く位置であり、キッカーはそのポイントを目指して助走をすることになる。
 では、ボールを真っ直ぐの方向に蹴るにはどうすればいいのか。本コラムは右脚でのキックを想定して説明する。


 サッカーボールとは違ってミートポイントの狭いフットボールではキックの際に正確なミートが求められる。ややボールを右に傾けると若干ではあるがそのミートゾーンは拡がる。
  しかしながら、ボールの回転もやや右に角度が加わるためボールの軌道もシュートする可能性があるので傾け過ぎには注意する。


 基本的に蹴り脚のフォロースルーはゴールポスト方向とイメージする。どうしても蹴り脚は振り切ることで左側にぶれることは当然の運動動作であるため、このイメージは重要だ。
 必要以上に蹴り脚を巻き込むとボールは左に傾きながら回転しカーブが掛かりやすくなる。フォロースルーの方向はボールをコントロールする上で重要なのである。


 ホールダーがポイントにボールを置く際に若干右に傾けることで、このカーブを矯正することもできる。
 ゴールポストのサイズは、横バーが地上10フィート(3・05メートル)、ポスト間の距離は18フィート6インチ(5・64メートル)だ。
 PATとフィールドゴール成功のためには、この決して広くないポストの間にボールを通過させなければならない。加えてラッシュするディフェンスメンバーにブロックされないようにセンター(以下C)からスナップされたボールを素早く、そして何よりもボールの軌道を高く蹴る必要がある。


 PATおよびフィールドゴールでのキックにおける主な運動動作は三つで①助走②キックミート③フォロースルーである。
 この主動作の前に、今何かと話題のルーティンも用いる訳だが、この考え方については後ほど持論で説明したい。ではそれら主動作を順番に解説する。


①助走と角度α
 NFLではスナップからキックまで約1秒程度。当然ではあるがラッシュは相当厳しく、少しの時間のロスでもブロックされる可能性がある。素早くそして真直ぐ蹴るにあたり、ミートまでの歩数と角度が重要になる。


 まずは歩数の考え方。理想的には右足スタートの3歩目でキックするのがベストかもしれないが、実際には難しい。(イメージ図3左参照)
 短いPATでは可能かもしれないが、長い距離と短い距離で違う助走での蹴り方は好ましくない。筆者の場合は実際にコーチを受けた訳ではないが、左足からスタートして4歩目でキックするようになった。(イメージ図3右参照) 


 この助走がスタンダードなテクニックであろう。スタートはボールがスナップされてからで4歩であれば、外からのラッシュも間に合わない。十分に練習を重ねれば1・5秒以内で一定のタイミングでキックすることは十分に可能である。
 その歩数と蹴るまでの時間はボールオンの距離に関係なく一定でなければならない。長い距離のキックだからといって長い助走という訳ではない。
 またゆっくりスタートするということでもない。何度も言うが、キッカーは全て同じキックでキックするのである。


 そして、その助走からのパワーを用いてスムーズにキックへの動作につなげるのが助走の角度である。
 ここでは「α角」とする。図5は助走からのポイントまでの助走角度α(以下α角)を示した。キックにあたっては先ずこのα角を自分の角度として固定させることが重要となる。


 このα角とは真直ぐ蹴ったボールの方向、すなわちゴールポストと対した角度でもある。このα角は何度も何度も蹴って自分のα角を確定するしかない。


 ではα角の確定とその調整について簡単に説明する。例えば何度も蹴ってみて、ボールが右方向にいく傾向がある場合、おそらくα角がゴールポストに対してやや大きいと思われる。
 ついてはスタートポジションを若干右側に変えてみる。(イメージ図4参照) 
 また、ボールが左側に向かう傾向のある場合は、助走スタート位置を右側には変えてみる。このような微調整を繰り返して、早く自分のα角を確定することが重要だ。


 基本的には自分のα角は常に一定としなければならない。しかしながらボールが逸れる=真っ直ぐ蹴れないのは単にα角だけの問題ではない。
 ミートポイントとその後のフォロースルーも重要な要素であることを忘れてならない。


 ②キックミート
 次にそのキックミートについてだ。PATとFGのキックイメージはサッカーで言えばボール下部を捉えてセンタリングを上げるようにシュートするようなキックになろう。
 その際に足のインフロント部分がしっかりボールを捉えるように足首を固定させる。右足の親指先の感覚がとても重要になる。


 親指先に目が欲しいぐらいだ。ミートゾーンが狭いボールを如何に正確に捉えるどうかである。これはいいイメージを繰り返してひたすら練習するしか方法はない。


 ここで簡単に練習について触れたい。練習とは“良いくせ”をつけることであり、“良いイメージ”を体で覚えることである。
 悪いイメージ、つまりキッカーでいうと蹴ったボールがゴールポストを外すことであり、つまりは真っ直ぐにキックができなかったことを意味する。


 この結果を何度も繰り返すことはミスの動作がステレオタイプ化されることになり、「正確性の欠けるキックの練習」をしているだけである。
 そのイメージを体で覚えることは絶対に避けるべきであり、そのタイミングでキックの練習をやめることが重要となる。


 いいイメージを思い出すべくVTR等の視聴をお勧めする。その判断ができるかどうかは本人の経験とコーチとの「あうんの呼吸」かもしれない。  
 私の場合はα角が固定されているので、左右への逸れを感じた場合で蹴ることをやめて翌日に持ち越す。イメージを崩したくないからだ。


 また練習時には特に最初の1本目のキックのイメージを大切にする。そういう意味では試合の最初のPATやFGが最も緊張する。
 それを良いイメージで乗り越えれば、最後まで心身ともに優位に試合に臨める。そのイメージ確保は重要だ。練習においても最初のキックが最も重要である。


③フォロースルー
 キックで最も重要なポイントが蹴り脚のフォロースルーと視線の方向である。概ねイメージ図6の通りである。まずはフォロースルーの方向のイメージはゴールポストに向かう。
 あくまでもイメージである。若干左に巻くのは誤差の範疇で扱い、セットするボールを若干右に傾けてフォローする。


 シュートのイメージでフォロースルーをゴールポストの方向に蹴り出す。センタリングを上げるイメージだとフォロースルーは自身の体の方向に相当巻いてしまうので、ボールもカーブが掛かり左に外れるケースが高くなる。ボールも左に傾斜ながら回転するため更にカーブが誘発させるので要注意である。


 次にその時の視線の方向だ。絶対にヘッドアップしてはならない。最後までポイント(昔はキックティ)を見るということが重要である。
 どうしても結果、つまりボールの方向と成功、不成功が気になる。しかし、キックは蹴った瞬間に既に方向は決まっている。キッカーはその感触で結果は分かるはずである。


 要はゴールポストから外れるボールは見る必要はない。ミスキックしたイメージも瞬間に忘れることが重要なのである。
 もう一つ重要なことは、ポイント以外を見ると自然に相手ディフェンスも視界に入り余計なプレッシャーを感じることになる。キッカーは相手も味方の関係ない。全てのオフェンスメンバーの完璧な仕事の中でキッカーはただポイントにあるボールをキックするだけなのである。


 ▽ボールを真直ぐの方向に蹴る(2)
 次に、試合環境でのボールポジションにおける距離と角度についてキッカーとしての考え方について説明する。これはあくまでも筆者独自の考え方であるのでご承知願いたい。


 試合でのボールポジションは常に真ん中、つまりゴールポストの正面とは限らない。確率的には三分の二が正面でないということになる。
 その際も真っ直ぐ蹴るイメージが持てるかどうかが重要だ。距離があっても常に助走とα角の考え方は同じである。つまりボールがハッシュにかかりゴールポストの方向に角度が生じてもα角は常に同じ角度である。(イメージ図7参照)


 さらにその際のイメージが重要だ。例えばハッシュにボールがあったとしても、ここでも“真っ直ぐ蹴る”イメージを想定する。
 その考え方をイメージ図8に示した。つまり「ボールとゴールポストは斜めではなく“真っ直ぐ”であり、斜めなのはグラウンドである」というイメージだ。


 そこまで深く思い詰めることはないが、あくまでもメンタルでのルーティンである。私の場合はいつもそう思って、あとはホールダーが置いたボールを真っ直ぐ蹴るだけであった。(FG日本記録保持者、帝京大学経済学部経営学科スポーツ経営コース准教授・川上祐司)


 つづく

【写真】