2月7日(日本時間8日)に米カリフォルニア州サンタクララのリーバイススタジアムで行われた第50回スーパーボウルは、デンバー・ブロンコスが24対10でカロライナ・パンサーズを破って17年ぶり3度目の優勝を果たした。


 この試合で、快挙を成し遂げた日本人がいる。ブロンコスのチアリーダーとして4年目のシーズンを迎えた西村樹里さん(27)。日本人のNFLチアリーダーとして、初めてスーパーボウル優勝を経験した。


 「今年こそ優勝トロフィーを勝ち取ってほしかったので、優勝できて本当にうれしかった。チーム全体が(アルツハイマーと闘病中の球団オーナー)パット(ボウレン氏)のために力を合わせて戦いました。誰かのために団結する素晴らしさを体験できて、チーム皆の願いもかなえられました」と西村さんは喜びを口にした。


 これまでに約30人の日本人チアリーダーがNFLで活躍。今季は10人の日本人チアリーダーが華麗なパフォーマンスでアメリカのファンを魅了した。
 選手同様にチアリーダーもスーパーボウル出場権を勝ち取るのは非常に難しく、これまでにスーパーボウルの大舞台で踊った日本人チアは西村さんが二人目。今季は4人の日本人チアリーダーがプレーオフに出場したが、プレーオフでの勝利を経験したのも彼女だけだった。


 「強いチームでも勝ち続けることが難しいのがNFL。何年もプレーオフに出場を続けていること自体がすごいこと。今季はプレーオフでもタフな試合を乗り越えてきたので、それが自信につながりました」


 今季のブロンコスはシーズン途中に大黒柱のQBペイトン・マニングが不振に陥り、一時はプレーオフ出場すら危うかった。「そんな困難を乗り越えて勝ち取った優勝。全ての出来事に意味があると感じました」と西村さんは今季を振り返る。


 今年のスーパーボウルではマニングの引退問題が注目を集めたが、実は西村さんも4年間のNFL生活に終止符を打つ決断をして大舞台に臨んでいた。


 「引退は誰にでも来るものです。自分のタイミングで決めたのが、たまたまスーパーボウルという大舞台でした。勝っても負けても、悔いが残らないように4年間分の気持ちを込めて踊りました。優勝できたのは、4年頑張ったご褒美だと思っています」


 ブロンコスは2年前にもスーパーボウル出場を果たしたが、そのときはシアトル・シーホークスに敗れて頂点に立つことはできなかった。今回の優勝は、当時の苦い経験が生かされたと言う。


 「チームの半分以上がスーパーボウルを経験していたので、2年前とは全てが違いました。今年は用意周到に試合の臨め、安心してパフォーマンスができました。場所もカリフォルニアなので、デンバーから来たファンも多く、ホームゲームでパフォーマンスしているような気持ちにもなれました。多くのブロンコスファンがサンフランシスコに来ているのを見て、ファンから力をもらい、絶対勝てると確信していました」という。


 NFLのチアリーダーは選手のように実際にフィールドに立ってプレーはしないが、彼女たちの存在はチームの勝敗と無関係ではない。
 『12番目の選手』と呼ばれるファンの声援は地元チームに力を与えるだけでなく、相手チームのコミュニケーションを狂わせ、反則を誘発するケースも多い。そんなファンの大歓声を引き出すのもチアリーダーの役割だ。


 今回のスーパーボウルでも、総獲得ヤードはパンサーズの315ヤードに対し、ブロンコスは194ヤードと大きく離された。
 しかし、反則はブロンコスの6回、計51ヤードに対してパンサーズは倍の12回、計102ヤードと大切な場面でチャンスを逃した。


 「私たちの仕事はどんな試合状況であっても、ファンのボルテージを高め、気合を入れること。今回はスーパーボウル用の特別なダンスを用意して、ファンの気持ちを高めるようにしていました。シーズンからポジティブな気持ちで踊ることを心がけていて、前向きな気持ちがチームに伝わることもシーズン中に経験していたので、チームに勝ってほしい気持ちを込めて応援とダンスをしました」
 観客を魅了するパフォーマンスをするために、NFLのチアリーダーは選手同様に日々体を鍛え、厳しい練習を積んでいる。


 スーパーボウル優勝という最高の経験をして、西村さんは4年間のNFLチアリーダー人生を終え、新たな一歩を踏み出す。


 「踊ることはもちろん大好きですが、チアを通じて気づいたのが、人の笑顔を見るのが本当に好きなんだということ。私たちのパフォーマンスでファンが笑顔になってくれる。出会った人に最高の一日を過ごしてもらうのがチアリーダー」と語る西村さんのスーパーボウル優勝は、多くのスポーツファンを笑顔にしてくれた。(Office W2・三尾圭)

【写真】ブロンコスのチアリーダーの一員として、チームのスーパーボウル優勝を見届けた西村樹里さん(中央)=撮影:Office W2・三尾圭