各地では紅葉も始まり、ここ八ヶ岳でも霜が降りるようになりました。空気もひんやりして心地のよい秋の高原です。
 アメリカンフットボールはリーグ戦も折り返し地点でしょうか。季節の変わり目、体調管理には注意を払いたいものですね。


 市場に出回る食材の旬も変わり、食卓でも秋を感じられるようになりました。秋の味覚といえば秋刀魚。今回は魚―脂質、についてのお話です。


 アスリートにとって、脂質は「敵」でしょうか。私はそうは思いません。体に蓄えられている脂質の役割は、重要なエネルギー源になるだけでなく、私たちの体の組織を作るうえで、重要な役割を果たしています。
 競技種目によって適切とされる体脂肪率は異なるでしょうから、自分の競技やポジションによって、また試合時に必要なエネルギー量によって、適切な脂肪を摂取、または蓄積しておくことが大切です。


 毎日の食生活で運動量に見合わない過剰なエネルギー摂取(脂肪を多く含む食事も含めて)が習慣化してしまった場合には注意が必要ですが、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスが取れていれば問題にはならないですね。
 揚げ物、こってり脂のラーメン、乳脂肪の多い洋菓子など、体重維持や体重減少には「大敵」のように考えられてしまうかもしれませんが、時にはそれを食べて「気分転換」も大切だと思います。


 アスリートの場合はどうでしょうか。体脂肪率は、あくまでも「適正値」を目指すことが大切です。体に蓄積している脂肪のことを“体脂肪”と言います。
 大雑把に考えれば、全体重のうちこの体脂肪がどのくらいあるかの割合が体脂肪率です。練習中や試合中に必要なエネルギーは体に蓄えられた糖質やこの体脂肪を使用しますが、糖質は1グラムあたり4キロカロリー、脂肪は1グラムあたり9キロカロリーのエネルギーを発生します。
 しかも運動中に発揮するエネルギー機構は数種類あって、それらをバランスよく動かしています。脂肪を使うエネルギー機構は最も持続的にエネルギーを発揮することができるのです。


 ある程度の体脂肪を蓄えておくこと、そして油を使った料理をすべて拒絶する必要はないことがご理解いただけたでしょうか。


 “あぶら”の漢字は2文字。「油」と「脂」です。一般的には植物性食品の油・魚の油には「油」、バターなど、動物性の脂には「脂」を使います。
 どちらも体に害があるわけではありません。「脂≒中性脂肪」は糖質より高いエネルギー源となり、内臓の保護や体温の拡散防止などのはたらきをします。魚油などに含まれる不飽和脂肪酸の中には、よく耳にされる「血液さらさら効果」があると言われています。それぞれの脂質には役割があるのです。ただし、過剰摂取だけ管理すれば大丈夫です。


 今回は秋の王様、秋刀魚に注目してみました。秋刀魚は夏の終わりから漁が始まりますが、9月までは収穫量が不安定だったとか。魚屋さんの話によると、ここからあと少しの期間はご家庭でも楽しめるくらい出回るそうです。
 今回は最もシンプルな塩焼きと、蒲焼にしてみました。塩焼きには秋の栗と新米の焼きおむすびを添えて。栗はナッツの仲間ですが、中でも糖質の多い食材です。実はアスリートにはおすすめの食材です。


 蒲焼は三枚おろしにして両面に塩、こしょう、片栗粉をふり、甘辛いお醤油と合わせてみました。新米のツヤツヤ白いごはんと一緒に、たっぷり召し上がってください。
 写真に添えた山椒の葉、秋の山椒には赤い実がつきます。うなぎの蒲焼のようにはいきませんが、香りも移って食欲も進み、五感で楽しんでいただけるのではないでしょうか。


 シーズン真っ只中、緊張感も不安もあり、食が進まないときもあると思います。五感で楽しめる秋の食卓が増え、アスリートの皆様の豊かな時間となりますように清里よりお祈りしています。


(引用)新カラーチャート食品成分表(発行者 佐久間ひとみ,発行所 教育図書株式会社、P8)


大柴 由紀(おおしば・ゆき)プロフィル
 管理栄養士。奈良女子大学食物学科卒業後、大阪市立環境科学研究所附設栄養専門学校で栄養士免許取得。1998年財団法人キープ協会入社。レストラン勤務の傍ら、料理に自然の恵みを表現するため、八ヶ岳の自然を大切に循環型農業で米や野菜を育てる農家との交流を深める。2000年7月キープ自然学校開校。アメリカンフットボールと出会う。公益財団法人キープ協会勤務。学校法人新宿調理師専門学校講師、日本ウエルネス学会常任理事、山梨県栄養士会理事を務めている。

【写真】秋の味覚 焼きお握りで