「リーグ最終戦」


 先週末の試合でプレーオフ出場が決定し、今週のリーグ最終戦を前にした練習もいい雰囲気で行われました。
 水曜日の練習には、強豪・東京大学医学部アメフト部でプレーされていた医師の方が見学に来られました。86ersの選手のサイズ、QBの球筋やWRの捕球技術の高さなどに驚いたとのことでした。


 リーグ最終戦は、ここまで5位のクリスチャンスタッド・プレデターズとアウェーで戦います。片道620キロをバスで移動します。
 試合前日の金曜日の午後2時30分にウプサラを出発、途中サービスエリアで休憩、食事休憩などがあり、クリスチャンスタッドには23時に到着しました。


 町に着いてさっそく選手と短時間の町の散策。といっても彼らは試合前なのでスナックやアイスを買うだけです。私は一群からこっそり抜け出して、バーでビールを一杯飲んで一息つきました。


 翌日ホテルのチェックアウトは12時。それまで選手はしっかり睡眠をとって、非常にいいコンディションで試合に臨むこととなりました。
 晴れた気持ちのいいスウェーデン南部の気候の下、16時に試合開始となりました。


 この試合、選手、コーチ以外のチームのサポートスタッフは私一人だったため、これまで帯同した試合の中で最も多忙でした。
 特に、これまでやったことがない給水係の仕事に追われました。ボトルの水を補充し、電解質入りのドリンクを作ったり、選手に渡しに行ったりで、前半は試合の動きをほとんど追えない状態でした。


 ボトルの補充をしていたら「シンジ!」と呼ばれて走って行ったらWRが負傷して倒れていて、ゲームドクターと一緒に診断応急処置を施しました。また、他の何人かの選手のアイシングやテーピング、負傷の応急処置をしたり、今朝の飛行機が欠航になって現地にこられなかったスポーツディレクターの要請で、試合経過をネットでアップデートしたり、そして、選手から期待されているカメラマンとしての役割と、一人数役を何とかこなしました。


 試合は前半を36―13で折り返し、第3クオーター残り5分のところで49―13となり、35点差がついたので、時計が止まらないランニングクロックとなり、そのまま試合が終了しました。
 最後のタッチダウンは途中から入った控えQBとRBで取ったので、サイドラインも彼らの祝福で大いに盛り上がりました。


 リーグ最終戦を会心の勝利で飾り、7勝3敗の3位という結果となりました。試合後は集合写真を撮ってさらに盛り上がりました。


 私も「今日は一人でよく頑張った。ありがとう」と、ヘッドコーチやコーチ、選手から声をかけられました。
 帰りの貸切バスでは若い連中が音楽を大音量で鳴らしてお祭り騒ぎでした。みんなと喜びのハイタッチ。ひと時の勝利の美酒に酔いました。


 バスは日曜日朝4時すぎにウプサラに到着しました。出迎えてくれていたオーナーのセーデルベリ氏からもねぎらいの言葉をもらいました。負傷者について簡潔な報告をし、夜が明けかけた町を歩いて帰りました。


 次の試合は、8月29日土曜日。プレーオフ、準決勝の対戦相手は、今季スーパーシリーズは9勝1敗の2位、しかし、7月24日に行われたIFAFヨーロッパのチャンピオンズリーグ決勝でベオグラードを84―49のスコアで下し、今季のヨーロッパチャンピオンに輝いた、カールスタッド・クルセダーズが相手です。アウェーでの戦いとなります。


 懸念は、第2WRが負傷でプレーオフ出場は絶望となったこと、そして、正QBがタックルを受けて負傷したことです。
 プレーオフ進出が決まっていて、翌週に試合があることがわかっているため、主力がけがなどせず万全の態勢で臨むためにもリーグ最終戦は控え中心で行けばいい。QBも控えを先発させたら、と私は思っていたのですが、ヘッドコーチはそのようには考えてなかったようです。


 もちろん、試合前に誰が負傷するかなどわからない訳ですし、チームのいいリズムの継続、プレーの熟成という観点からレギュラーの経験をさらに積ませる方がいいのでしょう。
 残念ながら、私の心配した事態となりました。そのQBは今週の練習でもやはり痛みが残っており、土曜日までにどれだけ症状が改善するかが彼のプレーの質、そして試合の結果に影響すると思われます。


 練習を見ながら、この2015年のチームとしての活動が、プレーオフの結果次第で今週で最後になるかもしれない、と思うと、寂しさを感じずにはいられませんでした。
 来シーズンに関しては、またお手伝いするかどうかは決めていません。今シーズン、勝利、そして優勝、という目標に向けて切磋琢磨する集団と数カ月行動をともにして、私にとっても非常に充実した日々となりました。


(つづく)


山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル
 1969年生まれ。外科医。日本、アメリカの施設で腹部一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回アメリカンフットボール世界大学選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

【写真】リーグ最終戦で勝利し、プレーオフ進出を決めた86ers=写真提供・山本慎治さん