「ストックホルムでの戦い」


 世界選手権に出場するアメリカンフットボールの日本代表45人の中に、昨年のウプサラでの大学世界選手権大会に出場したカレッジ日本代表の選手が5人含まれています。
 彼らはその大会で光る活躍を見せてくれました。例えば、RB高木稜選手(京都大学卒、IBM)は、2試合でMVPに輝きました。


 スウェーデン戦では、小柄で俊敏な彼を大柄なディフェンス陣がつかまえることができませんでした。まさに、弁慶と牛若丸といった感じでした。俊敏性とディシプリンという持ち味を生かして、日本代表が強敵に立ち向かっていくのを楽しみにしています。


 5月9日、ウプサラ86ersの今季2試合目がストックホルム、セーデルマルムの競技場で開催されました。
 対戦相手のストックホルム・ミーンマシーンズの去年の成績は2勝8敗。同じカンファレンスで戦い、2戦2勝の相手です。
 86ersのオーナー、セーデルベリ氏によると、今年もあまりチーム力の上乗せはないとのこと。ストックホルムはスウェーデンの首都で、人口も87万人なので、他の小規模の地方都市のチームより選手やスポンサー獲得などにおいて優位と思われます。


 しかし、やはりオーナーのチーム作りへの熱意による部分が大きいのでしょうか。余談ですが、6チームで構成されるアメリカンフットボール女子トップリーグでは、ストックホルム・ミーンマシーンズ女子チームは6月末現在で負けなしの首位です。


 晴れた気持ちのよい土曜日の午後のこの日の試合、86ersが終始優位に進め、39―0で今季初勝利を収めました。
 オフェンスは六つのタッチダウンを記録、そのうちの三つはエースRBのジョナサン・ヴィクストロムがあげ、MVPとなりました。


 他にQBのランによる1TD、そしてパスで2本のTDでした。セルビア人WR ストラヒンヤ・ステポジッチがエンドゾーンで片手でキャッチしたのはまさにスーパープレーでした。
 4Q途中からは控えQBジャレッド・ステグマンも出場しました。ディフェンスもほぼ相手オフェンスに仕事をさせませんでした。


 うれしいニュースとして、アメリカの大学に留学していたカレッジスウェーデン代表選手(LB)が帰国、この試合から合流しました。この試合の問題点としては、PAT、とくにキックの選手が不調だったことがあげられます。


 次の週の月曜日、ジムでの選手のワークアウトに帯同しました。インポートプレーヤーのみならず、スウェーデン人選手達の筋力、跳躍力などを見て、やはりスーパープレーにはそれを裏付ける肉体があることを再認識しました。


 アメリカ人QBジェフ・ウェルシュは、今年36歳になるベテランで、お互い年齢の事で冗談を言い合ったりしています。
 しかしながら、俺はビーストだと本人が言っている通りの鍛え上げられた肉体です。彼のプレーは非常に落ち着いていて、ミスが少なくパスも的確。


 ディフェンダーから逃げるのも抜群にうまく、スクランブルでここぞという時に長いヤードを稼ぎます。まさに、本人曰く、20数年QBとして生きてきた、その経験を感じるプレーヤーです。余談ですが、数年前に日本でプレーするという話もあったそうです。


 オーストラリア現役代表QBジャレッド・ステグマンも均整のとれた重厚な肉体です。WRとしてのスピードもあります。
 彼はアメリカでの世界選手権の後、日本でのプレーも希望していると言っておりました。人間的にも若いのに落ち着いており、彼の世界選手権での活躍、そしてその後の飛躍を期待しています。


 今季初勝利をあげ、チームの調子も上向きです。主力選手の故障などの大きな問題などもこの段階ではありませんでした。
 5月17日は、ホームでの開幕戦でした。2013年2014年と2年連続のファイナリスト、強敵・オレブロ・ブラックナイツとの対決、さっそくシーズン前半の山場を迎えました。
(つづく)


山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル
 1969年生まれ。外科医。日本、アメリカの施設で腹部一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回アメリカンフットボール世界大学選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

【写真】敵地ストックホルムでミーンマシーンズと対戦した86ers=写真提供・山本慎治さん