夏の暑い季節となりました。熱中症が心配される一方、体力維持に食べなくては、と思っていても食欲がわかない…。そんな声も耳にする季節です。


 こちら八ヶ岳では田植えも終わり、涼やかな緑の田んぼが広がっています。小麦畑は黄金色に染まり始め、そばの畑は白い花を咲かせています。
 畑にはキュウリやいんげん、ズッキーニがなり始め、しばらくするとトマト、ナスといった夏野菜が始まります。
 季節の移ろいは早いものですね。


 食欲が出ないこの時期、エネルギー補給はどのような工夫があるでしょうか。
 ひんやり冷えた冷やしうどんやそうめん、冷やし中華、果物、たんぱく質の補給に冷奴、ヨーグルト。ピリ辛を利用して豚キムチ、麻婆豆腐、担々麺など。
 練習後食欲の出ない時などは冷やした食材を利用することで食欲も増進、ほてった体をクールダウンすることもできます。


 野菜の中でキュウリはクールダウンの代表選手。栄養価は少ないかもしれませんが、水分の補給にもなり、体をしっかり冷やしてくれる役割は見逃せません。


 八ヶ岳の夏野菜のもう一つの“注目選手”はトマトです。トマトにはリコピンという栄養素が含まれ、抗酸化作用があるといわれています。他の栄養素もバランスよく含まれているため、夏のジューシーなトマトは食卓には欠かせません。
 トマトはさまざまな料理に使えます。氷に浮かべたトマトを丸かじり、トマトの冷製パスタもいいですね。ガスパッチョ、グリルにして甘みたっぷりのトマト、いろんなプチトマトを合わせたカクテルサラダも格別です。


 夏だからこそ! という毎日の食事のポイントを二つお伝えします。
①一度にたっぷり食べられない時は、一日何度かに分けて食べる
②消化のいいものを食べる


 猛暑、ハードな練習に加え学業やお仕事に専念しながら朝、昼、夕ときちんとした食生活。なんて考えると、なんだかそれだけで疲れてしまいそうです。
 アスリートの食事の基本は自分のエネルギー消費量は確保し、プラスアルファの蓄えを貯金しておくことです。体重が減るという現象は、摂取エネルギー不足が疑われます。


 練習後の丼飯大盛は無理、と感じたら、その時食べられなかった分をその日のうちにおにぎり、パン、団子などで補います。
 一日トータルが消耗量を上回っていれば、理論上は体重も減らないはずです。一日3回の食事だけでなく、補食を利用してエネルギー不足を補うことができます。


 一方、消化に負担をかけない食べ方も有効です。体を酷使するときは炭水化物、油脂分の少ないたんぱく質(豆腐など)を中心に、夕食やオフの日にはリラックスして楽しい食事のひと時を楽しむなどのメリハリも有効です。


 次に食材の組み合わせです。例えば「冷やしおろしうどん」は、大根おろしや薬味が食欲をそそります。この組み合わせでは、大根おろしがポイントです。
 大根のでんぷん分解酵素(ジアスターゼ)がうどんの消化を助けてくれて、大根の辛味成分には殺菌作用があり、免疫力が下がっているときには助かる食材の組み合わせです。


 夏でも忘れたくないのは発酵食品です。
 皆さんご存知の甘酒は、昔は夏の飲物だったとか。甘酒は夏の季語なのだそうです。
 江戸時代には天秤棒をかついで甘酒を売り歩く甘酒屋が夏場の風物誌だったと聞いて、合点がいきました。


 味噌汁も忘れてはいけません。味噌の材料の豆や米麹または麦麹は発酵によりすでに体内に吸収すべきたんぱく質と糖質に分解されています。
 日本人には多いといわれている乳糖不耐症、生の牛乳はだめだけどヨーグルトなら大丈夫、という方はたくさんいらっしゃいます。これも発酵の力、腸内で速やかにぶどう糖が吸収されエネルギーになります。


 最後にもう一つ、消化しやすくする調理法です。野菜がたくさん食べられない方には、スムージーをおすすめします。はちみつやヨーグルト、バナナで味を調えればサラダを無理に食べるより効率的かもしれません。
 野菜ジュースやサプリでもほぼ同じ栄養を摂取できるかもしれませんが、食物繊維の量に差が出るという指摘が多いことも事実です。
 ということは、排便には影響があるかもしれませんので、ご自身の体調との相談が必要です。


 夏の食欲増進。調理や食べ物の選びかたできっとハードルは低くなるはずです。体にとっては過酷な練習が続く時期ですが、食事の工夫で体力の維持にお役立ていただければと思います。


大柴 由紀(おおしば・ゆき)プロフィル
 管理栄養士。奈良女子大学食物学科卒業後、大阪市立環境科学研究所附設栄養専門学校で栄養士免許取得。1998年財団法人キープ協会入社。レストラン勤務の傍ら、料理に自然の恵みを表現するため、八ヶ岳の自然を大切に循環型農業で米や野菜を育てる農家との交流を深める。2000年7月キープ自然学校開校。アメリカンフットボールと出会う。公益財団法人キープ協会勤務。学校法人新宿調理師専門学校講師、日本ウエルネス学会常任理事、山梨県栄養士会理事を務めている。

【写真】夏の食卓に欠かせないトマト=写真提供・大柴由紀さん