「スウェーデンのスポーツ事情」


 今回はまず、スウェーデンのスポーツ全般の事情についてお話します。
 スウェーデンは北欧、スカンジナビア半島の東側に位置し、バルト海という内海に面しています。国土面積は日本より19%広いですが、人口は約960万人です。


 スポーツは夏冬の競技全般的に盛んで、多くの分野でトップレベルの選手を輩出しています。国際大会でも優れた成績を収めています。
 日本の10分の1以下の人口で、例えば北京オリンピックのメダル獲得数は8、ソチオリンピックのメダ数は15でした。


 一番メジャーな競技はサッカーです。ワールドカップでは1950年大会3位、1958年大会(スウェーデン開催)準優勝。そして1994年大会でも3位の成績を残しており、多くの選手がヨーロッパのトップリーグで活躍しています。
 競技者人口も全てのスポーツの中で最も多く、フロアボール(屋内ホッケー競技)、ゴルフ、アイスホッケーが続きます。


 また、ハンドボール、陸上競技、そしてスキーなどのウインタースポーツも盛んです。メディアによく取り上げられる競技としてはサッカー、フロアボール、陸上競技、アイスホッケー、スキー種目上位が占めます。


 実際のところ、アメリカンフットボールがメディアで報道されることはほとんどありません。全国区の新聞でも、まれにNFLの記事、毎年一回スウェーデンのトップリーグの決勝の記事と、選手のドーピング検査で陽性が出た、といった記事が掲載される程度です。
 ただ、ウプサラ地域のローカル新聞ではスポーツ欄でチーム状況や試合結果が報道されています。86ersのサイトによると、スウェーデンのアメリカンフットボールのライセンス保有競技者人口数は上昇傾向で、現在約2400人とのことです。


 86ersの本拠地ウプサラ地域の人口は20万人程度なので、他の競技を選択せずにアメリカンフットボールを選択する若者の数も限られていると思われます。また、チームの経済状況も(地域の他のスポーツチーム同様)万全とはいえないと説明されています。
 観客数は1試合平均で340人程度。多くが選手や下部組織の若者の家族や友達で、それ以外のファンの観戦は限られているという印象です。
 入場料、グッズや軽食などの収入もさほど見込めず、会費とスポンサー企業からの提供が重要な資金源とのことです。


 話を去年の86ersの戦いに戻します。
 2014年の86ersは、4連勝と素晴らしいスタートを切ったものの、シーズン開始前にスウェーデン代表レベル選手3人が手術を受けていてリハビリ中でした。
 また、4試合目で、ディフェンスの主力選手2人がアクシデントで離脱。5試合目の敗戦の試合でもディフェンスの主力選手が離脱しました。


 大学アメフト代表QBでチームではDB/WRのファイビアン・セーデルベリ (チームオーナー、マルティンの息子で兄のダニエルも代表選手) に4試合終わったところで話を聞いたところ、今まで当たったのは弱いチームだけで、これから強い、プレーオフの座を争う4チームとの対戦が待っている、と言っていたのですが、まさに、その4チームとの対戦前に、ディフェンスのスターティングメンバ―が大きく入れ替わってしまいました。


 結局、最後の試合に至っては、ルーキーのRBが練習でもプレーしたことがないディフェンスのポジションで出場せざるをえないという状態でした。
 選手層が初めから薄い状態で、主力選手の相次ぐ離脱が大きく影響しました。さらに、実力がありながらも勝手な行動が目立つ選手もいて、彼は重要な試合よりも夏の旅行を優先していました。


 ちなみに、チーム専属のアスレチックトレーナーは不在で、私がその役目を務めました。日本代表のアスレチックトレーナーの方々の仕事を見て学んだことや、本や動画で勉強したことを文字通り見よう見まねでやってみたのですが、うまくいかないことも多かったです。


 スポーツ医学専門の整形外科医がいる病院はストックホルムとウプサラにあって、必要と思われる場合は受診を指示をしました。ホームの試合では、私と麻酔科医のエバ・セーデルベリ (マルティンの奥さん)がマッチドクターを務めました。練習やアウェーの試合には彼女は帯同しないので、私は可能な限り帯同しました。


 オフェンスに関しては、インポートプレーヤーのQB、スウェーデン代表のOL、WR、RBの選手がそろっていましたが、大切な試合全てで競り負けました。
 なお、5月末から6月初めに開催されたヨーロッパ選手権に参加した選手達はかなり疲労していました。


 QBはアメリカからこちらに来る前に肩の手術を受けていましたが、チーム練習の時も試合を通じても彼ひとりが投げ続けました。
 彼はシーズンを通じて一度も私に話しかけてきたことはありませんでした。言っても無駄だと思っていたのでしょうし、何があっても最後まで一人で投げ切るつもりだったのでしょう。


 最終試合の後で、「肩が痛かったのではないのか」と尋ねたら「わかるのか」と彼が言いました。やはり、練習だけでも別のQBが手伝えば、負担も疲労も少なかっただろうと思われました。
 選手一人ひとりをみると屈強で、やはり日本人にはない骨格と筋肉量、力強さをもった選手がたくさんいて、個人としてもチームとしてもより上のレベルにいけるように思えました。


 このように、大学日本代表チームの組織を知っている者からしたら、物足りないと思われる点がいくつかありました。
(つづく)


山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル
 1969年生まれ。外科医。日本、アメリカの施設で腹部一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回アメリカンフットボール世界大学選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

【写真】スウェーデンでの試合風景=写真提供・山本慎治さん