2月も残り少なくなってきました。ここ八ヶ岳の清里高原は、まだ一面の銀世界です。お昼間太陽の光が差し込むと森はキラキラと輝き、青空にくっきりと映える真っ白な八ヶ岳は晴れ晴れとした気持ちにさせてくれます。
 気温は氷点下。空気は凛として、深く胸に吸い込んで深呼吸するとリセットされた気持ちになるのは私だけでしょうか。


 冬の寒さを利用して仕込む日本人の食文化のひとつに、味噌があります。私は尾張名古屋の八丁味噌文化で育ち、関西の白味噌文化で学生時代をすごし、ここ山梨へきて麦味噌の文化に触れています。日本全国、さまざまな味噌を使った料理があり、味噌文化の幅広さにいつも興味津々です。


 味噌とスポーツ? 関係がないわけではありません。
 味噌は主に豆(大豆)と麹(米麹、麦麹など)、塩でできています。熟成期間を経て調味料として使うころには、豆のたんぱく質と米や麦の炭水化物が麹の力で分解されて、実に人間の体に消化吸収されやすい状態になっています。
 ここが、アスリートにはおすすめのポイントです。


 すでに栄養が分解されているということは、体で分解するエネルギーは必要なく、素早くたんぱく質と若干の糖質が吸収できるということです。


 代表的な料理は味噌汁ですが、味噌汁はかつおや昆布のうま味と、分解されたたんぱく質、炭水化物がバランスよく含まれていることになります。
 もうお分かりかと思います。「お味噌汁」はアスリートのみならず、どんな方にもおすすめの栄養ドリンクといえましょう。


 他にも味噌の料理はたくさんあります。豚汁、味噌漬け焼き、味噌田楽、味噌カツ…。
 名古屋で育った私は“味噌煮込みうどん”は馴染み深い郷土料理でした。そして、ここ八ヶ岳高原は山梨県。郷土料理のひとつに“ほうとう”があります。


 どちらも味噌を使ったお汁に、具と麺を入れて煮込みます。“ほうとう”の正しい食べ方を聞くと、季節の野菜をたっぷり入れた味噌汁とここの土地で収穫した小麦を使ったうどんを煮込んで、汁まですべていただくのが山梨流。最後のお汁一滴にまで、野菜と小麦と味噌の栄養が含まれているからだそうです。


 消化吸収の良い野菜や小麦、そして味噌。昔の方達はこの味噌のたんぱく質や野菜のビタミン類などを栄養源としていたわけですが、アスリートにとってもうってつけの料理とも考えられますね。


 アスリートにおすすめなのは味噌だけではありません。豆や豆製品は良質なたんぱく質が摂取でき、料理方法によっては余分な脂肪を摂取することなく効率よくたんぱく質を摂取できるので、是非活用していただきたい食材です。


 “煮豆”を想像するとやや手間のかかる料理、という印象もありますが、大豆など一度にまとめて下茹でし、味付け前を小分けにして冷凍しておくと便利です。また豆製品では豆腐、納豆、きな粉、油揚げなどは手軽に利用できますね。


 大きなハンバーグでも、ミンチ肉を半分豆腐に置き換えるだけで随分エネルギー量が抑えられてヘルシーです。きな粉も重要なたんぱく質源。まだ冷蔵庫にお餅が残っていれば、きな粉もちなど、ジュニアアスリートにはおすすめです。


 さて、ちまたでは早く今年の味噌を仕込まなくては、という声が聞こえてきました。もうすぐ3月。ここ清里高原のおばあちゃん達は、4月に仕込む味噌は縁起が悪い(ゴロあわせで「シニミソ」というからだそうです)といいます。
 私も来週は1週間、味噌を仕込む毎日です。そして、去年仕込んだ味噌の蓋を開けて、出来栄えを楽しむ季節でもあります。


 食とスポーツ、アスリートの食事が栄養だけで偏ってしまっては寂しいものです。是非食べる時間は楽しみの時間となりますように。今年も気持ちのこもった手作りの味噌で、選手の皆さんを支えられればと思います。


 大柴 由紀(おおしば・ゆき)プロフィル
 管理栄養士。奈良女子大学食物学科卒業後、大阪市立環境科学研究所附設栄養専門学校で栄養士免許取得。1998年財団法人キープ協会入社。レストラン勤務の傍ら、料理に自然の恵みを表現するため、八ヶ岳の自然を大切に循環型農業で米や野菜を育てる農家との交流を深める。2000年7月キープ自然学校開校。アメリカンフットボールと出会う。公益財団法人キープ協会勤務。学校法人新宿調理師専門学校講師、日本ウエルネス学会常任理事、山梨県栄養士会理事を務めている。

【写真】山梨県の郷土料理「ほうとう」