第5回世界選手権は、現地時間の7月8日から19日まで8カ国が参加して米オハイオ州カントンで開催される。試合は全て2万2000人収容のトム・ベンソン殿堂スタジアムで行われる。


 5万人以上のキャパシティーを持つフットボール専用スタジアムがたくさんある米国では、2万人というのは小規模かもしれない。しかし、フィールドと観客の間をトラックが隔てる陸上競技場や、円形の野球場でフットボールをしている日本と比べれば、とても素晴らしい環境だと言えるだろう。
 大阪のキンチョウスタジアムの収容人員が約2万人なので、この球技場と比較すれば、日本のフットボールファンは会場のスケールをある程度イメージすることができるはずだ。


 前回大会の成績を基に世界3位にランキングされた日本は、予選リーグから米国、カナダ、メキシコの強豪国と対戦することになった。上位3チームが決勝トーナメントへ進出するという変則システムで、勝ち進めば再び米国やカナダと試合をすることになるだろう。
 つまり、12日間で最大5試合を消化するという日程の厳しさはあらかじめ分かっていたことだが、これに加えて試合の強度が大幅に増すことになったのだ。
 今大会の代表チームには、精神的にも肉体的にもタフな選手が必要とされる。


 さて、今回はディフェンス編。前回のオーストリア大会、カナダ戦の先発メンバーは以下の通りだ。


【2011年・第4回世界選手権カナダ戦ディフェンス先発メンバー】
DL 山中 正喜(パナソニック)
DL 脇坂 康生(パナソニック)
DL 西川 岳志(鹿   島)
DL 紀平 充則(オービック)
LB 古庄 直樹(オービック)
LB 東 健太郎(パナソニック)
LB 鈴木將一郎(富 士 通)
DB 藤本 将司(オービック)
DB 加藤 公基(鹿   島)
DB 今西 亮平(パナソニック)
DB 佐野 忠也(鹿   島)


 ▽世代間の争いが熾烈なDL
 全体を見ると、オフェンスと比べて4年前のメンバーが健在という印象がある。その中で最も世代交代が進む可能性があるのがDLだ。守備フロントと言えば、前回大会では脇坂康生、山中正喜、飾磨宗和の3人を代表に送りこんだパナソニックが、2000年代最強だった。
 しかし、平井基之に加えて岡本遥がDEのエースとして成長した富士通。冨田祥太、中田善博のDTコンビにDE三井勇洋が頭角を現したオービックが世代交代を進めている。代表選考では、ベテランと若手が激しく争うことになるだろう。


 DTについて、第1回大会から出場しており今年で46歳になる脇坂は、5大会連続出場を目指して既にライスボウル直後からトレーニングを開始しているという。あらためて昨シーズンの脇坂の動きをビデオでチェックしてみたが、率先してパシュートするなど機敏な動きを見せており、衰えは感じられなかった。
 「米田選手の重さが効いていて、中のランプレーが出なかった」と日本代表のヘッドコーチ(HC)を務めるLIXILの森清之HCがリーグ戦で評価した米田隆之(アサヒビール)も今年で36歳になるベテランだが、120キロの存在感は健在だ。
 中堅の紀平充則(IBM)はファンダメンタルの高さに裏打ちされたプレーで、昨季はIBMの初のJXB出場に貢献した。彼らに対して、年齢的には一回りも二回りも離れた冨田、中田ら若手選手が代表の座をかけて争うことになるだろう。


 個人的には、「豆タンク」系DTを選出するのもおもしろいのではないかと思っている。つまり、上背はないがスタートが低く、スピードでOLの間を割っていくことのできる選手だ。
 古木亮(富士通)、藤井快昌(IBM)に加えて、松本英一郎(関学大)はまだ大学2年生だが、ライスボウルでは富士通のOL相手に互角に戦っていた。おそらく海外勢はこれほど小さな選手と対戦したことはないので、うまくブロックできない可能性もある。


 DEは平井、岡本、三井の力が抜けている。特に三井はオービックでOLケアラカイ・マイアバと練習しているのが大きいのか、まだまだ成長しそうな気配だ。


 ▽LB陣はベテランが健在
 LBはベテラン選手がリーグで存在感を発揮している。前回大会の日本代表主将の古庄直樹(オービック)は、2010年からのオービックの日本選手権4連覇に大きく貢献した。古庄の特徴といえば衰えを見せないフィジカルの強さだが、何よりプレーリードに優れていることが強みだ。
 今シーズン、富士通を初の日本一に導いた鈴木將一郎は、若いころはパスラッシャーとしてのプレーが目立っていたが、ベテランになりオールラウンドプレーヤーとしての活躍が目立つ。
 東健太郎(パナソニック)、牧内崇志(LIXIL)らのプレーも円熟味を増している。


 中堅では昨春に代表の主将を務めた塚田昌克(オービック)が抜群の安定感を誇っている。「ミスが少ないことが自分の長所」と自身も語っている通り、確実なタックルで相手を仕留める。岸本祐輔(IBM)は強靭なフィジカルでタックルを量産する。


 若手では身体能力の高い竹内修平(富士通)が成長株で、今のところ代表に選ばれても出場辞退を表明している田中喜貴(ノジマ相模原)は、新人ながらビッグプレーを連発している。同世代の澤田遥(オービック)もサイズがあり、今後が楽しみな選手の一人だ。


 前回のLBの代表枠は「5」。本職のLBとしては脂の乗ったプレーを見せているベテラン勢だが、全員が順当に選ばれる可能性は少ないだろう。なぜなら、今大会のハードなスケジュールを考慮すると、フィジカルに優れた岸本と竹内はぜひメンバーに入れておきたいからだ。
 彼らはキッキングで貴重な戦力となってくれる。岸本、竹内ら若手が選ばれた場合、ベテランから数人が漏れることになる。代表としてともに戦ってきたメンバー同士が、最後のいすをかけて激しく争うことになるだろう。


 ▽戦力充実のDB
 WRと同様に、日本のDB陣はストロングポイントの一つだ。前回大会を経験したメンバーが多く残り、勢いのある若手と融合して高いレベルで争っている。


 CBは藤本将司(オービック)がエースを務める。昨春のドイツ戦でもただ一人ローテーションせずに起用されており、コーチ陣の期待の高さがうかがえる。ただ、昨シーズンはマンツーマンで攻略される場面が何度かあった。オービックの4連覇時代にはあまりなかったことだ。世界選手権に照準を合わせて、どこまでピークを持ってこられるかに注目だ。


 藤本の逆サイドは辻篤志(パナソニック)と三木慎也(富士通)が有力だ。辻は堅実なプレーが持ち味で、特にアサヒビール戦での三つのインターセプトはどれも秀逸だった。
 三木も安定感のあるプレーに加えて、社会人選手権のIBM戦では試合の流れを引き寄せるインターセプトリターンTDを決めた。


 CBのダークホースとしては、関学大の田中雄大がおもしろい存在だ。学生界では「シャットダウンコーナー」としての地位を固めつつある。4年生になる来季は、田中の守るサイドにほとんどパスは飛んでこないだろう。
 2年連続ライスボウルで活躍しており、大舞台での勝負強さも光る。前回大会ではDB8人が選出されているので、将来性のある田中が代表入りする可能性も十分にある。


 SFも人材が豊富だ。まず、SSでは今西亮平(パナソニック)が昨季6インターセプトを記録していて、リターナーとしても活躍した。若手ではフィジカルに優れる砂川敬三郎(オービック)と中谷祥吾(IBM)の関大出身のコンビに勢いがある。二人はボールに対する嗅覚も鋭いが、強靭な体を生かしたハードタックルが共通の魅力だ。


 FSでは藤田篤(富士通)と三宅剛司(オービック)が他をリードしている。藤田は安定したプレーに加えて、左利きのKのホルダーという「一芸」を持っているのも強みだ。三宅も守備範囲の広いSFでのプレー以外に、キックオフカバーでのセーフティータックルが素晴らしい。


 また、あるコーチが古庄をニッケル(5人目のDB)として起用するのもありなのではないかと言っていた。古庄は日本代表のSFとしてプレーした経験もある。今大会ではLBとDBでの併用はプランとして用意する価値はあるかもしれない。


 最後に過去の米国との対戦を振り返っておきたい。フル代表の日本チームが米国のチームと初めて試合をしたのは、ハワイ州選抜チームと対戦した2005年のジャパン―USAボウル(20―16で勝利)。07年に川崎で行われた第3回世界選手権(タイブレークの末、20―23で敗戦)では、初出場の米国と決勝で対戦した。09年のノートルダムジャパンボウル(3―19で敗戦)では米カレッジの名門ノートルダム大のOBと対戦している。


 戦績は3戦して1勝2敗だが、これらの結果はほとんど参考にはならないだろう。なぜなら、米国チームは大会を重ねるごとに強力なチームが編成されている。7月に自国開催の大会で対戦する米国代表は、史上最強だろう。


 一方の日本代表も外国人選手の加入でXリーグのレベルが上がっており、それは代表のレベルアップにもつながっている。
 史上最強の「JAPAN」が、フットボールの本場米国に乗り込んで「USA」にどこまで対抗できるか。楽しみな世界選手権となる。(共同通信社 松元竜太郎)

【写真】ドイツのロングパスをインターセプトするDB藤本=2014年