7月の世界選手権に向けた日本代表チームの編成がこれから行われていく中で、前回はQBについて考えてみた。今回はオフェンス全体について、ベストメンバーを探っていく。


 まずは前回のオーストリア大会、カナダ戦の先発メンバーを見ていただきたい。この時点で負傷で欠場していたWR長谷川昌泳(元パナソニック)を除いては、この選手たちが4年前のベストメンバーだったということになる。


【2011年・第4回世界選手権カナダ戦・オフェンス先発メンバー】
QB高田鉄男(パナソニック)
RB丸田泰裕(鹿島)
WR木下典明(オービック)
WR前田直輝(鹿島)
WR小川道洋(IBM)
TE大矢祐嗣(富士通)
OL村井雄太(鹿島)
OL村上崇就(IBM)
OL谷口祐二(パナソニック)
OL宮本士(オービック)
OL平本晴久(アサヒ飲料)
K青木大介(鹿島)


 ▽OLの世代交代は順調
 最も目を引くのが、村上崇就(IBM)を除いて4年前のスターターOLが全員現役を退いていることだろう。IBMのQBケビン・クラフトに「ジャンボさん」と呼ばれて慕われる村上も昨季は主にTEとしてプレーしており、OLとして代表選考に参加するかは微妙なところだ。


 つまり、攻撃の屋台骨を支えるOLの世代交代が必至の状況なのだが、若手は確実に育っていると見ている。
 ユニットのエースとして活躍が期待されるのが、Tの小林祐太郎(富士通)。小林は日本最強OLとの呼び声が高かったが、昨秋のオービック戦を見てそれを確信した。
 パスプロテクションをしながら、オービックのDLケビン・ジャクソンを押し返していたのだ。こんな光景は今まで見たことがなかった。


 小林をQBのブラインドサイドを守るLTに起用するとして、逆サイドには黒川晴央(アサヒ飲料)か坂口裕(オービック)が有力だろう。坂口は190センチ125キロのサイズに加えて手脚も長く、Tとしてこれからもっと成長しそうな気配がある。
 さらに、日々の練習でDLビーティー・ジュニアとジャクソンを相手にしていることは大きなアドバンテージだ。


 CはOL最重量の140キロを誇る荒井航平(LIXIL)、Gはサイズが魅力の野田健仁(アサヒ飲料)、山本祐介(オービック)、斎田哲也(富士通)らが争う。左に斎田、右に山本を配置すればGとTはチームメートとなり、コンビネーションは既に出来上がっている。


 上記のほとんどの選手たちは、複数のポジションや左右どちらでもプレーできるので、大会でけが人が出た場合にも問題なく対応できるだろう。総入れ替えとなり経験は乏しいOL陣だが、戦力は充実している。自信を持って大会に臨んでほしい。


 ▽WRは史上最高の陣容
 WRは引退した長谷川、清水謙(元オービック)以外のメンバーが全員残り、有望な若手も次々に台頭している最激戦区のポジションだ。
 前回大会の実績だと6人が選ばれることになるが、選出するコーチ陣も最後まで頭を悩ますことになるのではないだろうか。


 日本代表の不動のエースは木下典明(オービック)だ。WRとしての圧倒的な実力は誰もが認めるところで、リターナーとしてビッグプレーが期待できるのも魅力だ。
 今年で33歳になる木下だが、まだ衰えは見せていない。「米国やヨーロッパでプレーしていたころと比べれば落ちたが、日本でプレーする上では一定のレベルをキープできている」と木下は語る。


 「木下さんを超えられるよう、常に意識してプレーしている」と言う前田直輝(LIXIL)も、この4年間でエースWRの一角へと成長した。昨季のリーグ戦で、日本代表のエースCB藤本将司(オービック)を抜き去ってキャッチしたTDパスは圧巻だった。


 NFLへ挑戦した場合は出場が微妙だが、スピードが武器の栗原嵩(IBM)も間違いなくトップ選手の一人だ。前回大会での活躍も記憶に新しいベテランの小川道洋(IBM)も健在で、インサイドからアウトサイドまでこなすことができる。


 さて、ここまでで既に4人。後は前回大会に出場している実力派の萩山竜馬(オービック)と富士通の日本一に貢献した中村輝晃クラークあたりで決まりかというと、話はそう単純ではない。なぜなら、世界選手権においてレギュラー組以外の選手は、キッキングで戦力となることが求められるからだ。


 まだ今大会のレギュレーションは確定していないが、世界選手権のロースターはおそらく45人。つまり、普通の試合ではサイドラインに70人以上の選手がいて限られた役割を果たせばいいのだが、選手の数が半分となる世界選手権では複数の仕事をこなす必要が出てくる。そうなると本職のWR以外に、キッキングでたくさん貢献してくれる選手の価値が高まるのだ。


 まず、キックが蹴れる宮本康弘(LIXIL)が有力だ。宮本がLIXILのキックオフを担当していた時は、セーフティータックラーとしての活躍も素晴らしかった。
 次に宜本潤平(富士通)はリターナーに加えて、キックオフカバーでの働きが秀逸。池井勇輝(オービック)もリターナーを中心に何でも起用にこなせるので、コーチにとっては使い勝手のいい選手だろう。


 最後にWRの選考に影響を与えるもう一つの要素が、誰が日本代表の司令塔の座を勝ち取るかということだ。
 QBとしては当然、日ごろから一緒に練習しているWRがプレーしやすい。例えばエースは高田でいくということになれば、本多皓二、柴田尚彦、遠藤昇馬らのパナソニック勢が選ばれる可能性が高まることになる。いずれにしても今回選ばれるWRたちは、日本代表史上最高レベルのユニットとなることは間違いない。


 ▽RBは群雄割拠
 「今回活躍した若手と、来年の代表選考から参加するベテランが高いレベルで競い合ってほしい」。5大会連続の世界選手権出場を決めた昨春のフィリピン戦後に、森清之ヘッドコーチはこう語っていた。


 RBは前回大会の代表は丸田泰裕(LIXIL)、古谷拓也(オービック)、末吉智一(IBM)、神山幸祐(富士通)の四人だった。神山についてはWR、Kでの起用も想定したマルチプレーヤーとしての選出だったので、実質は3人の枠を若手とベテランが激しく争うことになるだろう。


 上記の選手以外で今大会の代表に選ばれる可能性がある有力候補は、原卓門、望月麻樹(ともにオービック)、宮幸崇、東松瑛介(ともにノジマ相模原)、高野橋慶大(富士通)、高木稜(IBM)の6人だと考えている。


 まず、ベテランの古谷は4度目の日本代表入りを目指す。国際試合での豊富な経験に加えて、昨年のパールボウル決勝で終了間際に同点のTDパスキャッチを決めるなど、ここ一番での勝負強さには磨きがかかっている。
 「アラフォー」世代にして進化を続ける古谷の力が必要になる場面は、必ず訪れるような気がする。


 末吉は個人トレーナーをつけての肉体改造が成功して、走りに力強さが増している。原は独特のタックルされにくい走りとシュアなパスキャッチが魅力。
 宮幸は縦への突破力とタフさが持ち味だ。若手の東松、高野橋、望月らも力をつけており、虎視眈々と代表の座を狙う。


 これだけ多彩なタレントがそろうRB陣だが、最終的にはオフェンスコーディネーターがどのような攻撃をやりたいか、つまるところ「RBの好み」に左右される部分はあるだろう。


 ちなみに私の一押しはIBMの高木だ。小柄だがとにかくミスが少なく、アサインメントをきっちり実行して確実にゲインを奪う力がある。
 昨年の大学世界選手権では2度のゲームMVPに選ばれており、大舞台での勝負強さも折り紙つきだ。


 残るTEについては、大橋智明(富士通)と森章光(オービック)が有力だ。特に大橋はキックオフカバーをはじめとして、キッキングで活躍できるので選出は間違いないだろう。
 Kについても、総合力が高い青木大介(LIXIL)の優位は動かない。選考期間中によほど調子を崩さない限りは、2大会連続の出場になると予想する。


 最終回の次回は、ディフェンス編をお届けする。(共同通信社・松元竜太郎)

【写真】日本代表の攻撃の要、WR木下典明(オービック)=撮影:Yosei Kozano