アメリカではスキャンダルが起きるたびに、いまだに「ゲート」をつける。ウオーターゲート事件から40年も経っているのに。


 何があったのか?
 米プロフットボールのNFLでは、1月18日にAFCのカンファレンスチャンピオンシップが行われた。
対戦カードは、ニューイングランド・ペイトリオッツとインディアナポリス・コルツ。試合はペイトリオッツが圧勝して現地時間2月1日に開催される「スーパーボウル」に駒を進めた。


 ところが、この勝利にケチがついた。
 試合で使われた12個のうち、11個のボールが、リーグ規定より空気圧が足りなかったという。そして、本拠地のペイトリオッツが「わざと空気を抜いていたのでは?」という報道が出た。英語では、ボールから空気が抜けた状態を「デフレーション」と呼ぶので、ここから疑惑のネーミングがつけられたわけである。


 空気が抜けていればボールが持ちやすく、寒冷地ではクオーターバック(QB)がプレーしやすい。
 NFLの解説者は、「1個なら分かる。3個なら偶然かもしれない。しかし、11個となると…」とコメントしていた。


 果たして、ペイトリオッツはこの操作を意図的に行ったのだろうか? そして、ベリチック・ヘッドコーチや、QBトム・ブレイディがそれを知っていたとしたら?


 ベリチック・ヘッドコーチは記者会見で、「決して意図的に行ったものではない。試合の品位を落とすような行為をしてもいないし、しようとしたことも全くない」と話したうえで、このような推論を展開した。
 「自動車のタイヤの空気圧が変化することに似ている。自動車は駐車している場所の気候によって、空気圧が変化する。基本的な概念としてはそれに近い」


 なんだか苦しい言い訳に聞こえる。
 ブレイディも「知らなかったし、今後もするつもりもない。厳しい状況だが、今はスーパーボウルに向けて集中したい」と話している。どう言い訳しようとも、アメリカの世論は「ペイトリオッツは有罪」というムードに支配されている。過去にも、ペイトリオッツは相手のサインを撮影した「スパイゲート」と呼ばれるスキャンダルを起こしており、イメージが決して良くないのだ。
 

 頂点を決めるスーパーボウル、ペイトリオッツは全米中を敵に回してプレーすることになりそうだが、戦力は充実している。 果たして「悪役ペイトリオッツ」はすべてをはねのけるチーム力を持っているだろうか。(スポーツジャーナリスト 生島淳)


生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル
 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBSのスポーツ番組ではキャスターを務めている。

【写真】ボールに規定違反があったとされる18日、アメリカン・カンファレンス決勝でパスをするペイトリオッツのQBブレイディ=フォックスボロ(AP=共同)