スウェーデンの辞退により一時は開催が危ぶまれていた第5回世界選手権が、7月に米国で開催されることが決まった。スケジュールなど大会の詳細は2月中に発表される予定だ。


 2012年に米国のテキサス州でU19の世界選手権が開催された。この大会では決勝で米国がカナダに17―23で敗れるという波乱があった。
 私はインターネットの生中継でこの試合を見ていたが、高校生中心のメンバーだったとはいえ、米国代表がフットボールで他の国に敗れるという事態に対して、ネットには多くの米国人ファンから悲鳴にも近いコメントが寄せられた。


 今大会はオハイオ州のカントンで開催される予定だが、プロフットボールの殿堂があり「フットボールの聖地」ともいえる場所で米国が敗れることは許されないだろう。
 地元開催に立候補したということもあり、NFL入りしていない優秀な選手を中心に、かなり強力なチームが編成されることが予想される。


 米国が出場しなかった1999年の第1回イタリア大会、03年の第2回ドイツ大会と連覇した日本だが、07年の第3回日本大会では決勝で米国に、11年の第4回オーストリア大会ではカナダに敗れて世界一を逃している。


 世界一奪還を目指す日本代表の今後の日程は、春先から数回に渡る代表選考と強化試合を経て、最終的なロースター45人が6月ごろに決定されるはずだ。
 Xリーグでの活躍を評価するのか、国際試合の経験を考慮するのか、または学生も含めたポテンシャルに期待するのか。少し気は早いが、世界選手権に臨む日本代表のメンバーについて考えてみたい。第1回はQB編だ。


 日本が世界一を目指す上で最も重要となるのがパス攻撃だ。「一昔前と違って、ランプレーでもOLがだいぶ押せるようになってきた。国際試合においてオフェンスの幅が広がる」。日本代表の森清之ヘッドコーチ(HC)は昨春のドイツ戦後にこう語っていた。


 確かに日本のOLは、Xリーグで急増する米国人DLとの対戦を経験するなど、確実に強くなっている。前回大会でも惜敗したカナダを相手に1回平均5ヤード以上のランを記録するなど、世界でも日本のランはある程度通用するだろう。
 だが、米国との対戦を考えれば、ランがコンスタントに出るという状況は想定しにくい。やはり、タイミングの早いパスを中心に攻撃を組み立てることになるだろう。
 WRにはベテランから若手までレベルの高い豊富なタレントがそろうので、彼らを操る司令塔がチーム浮沈の鍵を握る。


 正QB争いは、加藤翔平(LIXIL)、高田鉄男(パナソニック)、菅原俊(オービック)の三人を中心に展開されるだろう。今季、ボウルゲームの活躍で日本一に貢献した平本恵也(富士通)と畑卓志郎(オービック)らが後を追う。


 近年、急速に力をつけているのが加藤だ。今季のリーグ最終戦、WR前田直輝とのホットラインでオービックに勝利したのをはじめ、強豪相手にも素晴らしいパフォーマンスを見せている。
 「加藤君がクイックスローでピンポイントのパスを決め続けるので、ディフェンスとしてどうしようもない部分があった」。社会人の準決勝で苦しめられたIBMの山田晋三HCは、加藤のパスをこう評価した。


 しかし、加藤のプレーにはむらがあるという声も少なくない。春の富士通戦、秋のIBM戦ともに、点差が離れた第4クオーターに爆発的なパス攻撃を披露した。
 試合を通して安定的に力を出せるかどうかが、エースQBの座をつかむための課題になるだろう。


 高田は前回大会でエースQBを務めている。07年の日本大会では決勝で米国とも対戦しており、大舞台の経験という面では他の選手を圧倒している。ノーモーションからのパス、スクランブルができることに加えて、学生時代から発揮している勝負強さが最大の魅力だろう。


 今年で34歳になる高田について、既に全盛期は過ぎたという評価もある。以前は守備と1対1になる場面で必ず振り切っていたが、最近はサックを受ける場面も目立つようになった。
 所属するパナソニックの成績が振るわないことも気になるところだ。ベテランと呼ばれる世代に入った高田が意地を見せて、今大会もエースQBとしてプレーするのか注目だ。


 菅原は2010年から続いたオービックの日本選手権4連覇に貢献し、3年連続で日本選手権のMVPを獲得した。国内では十分すぎるほどQBとしての力を証明しているが、まだ国際試合での実績に乏しい。
 2009年のノートルダム大OBとの試合で、パスを何回もはたかれた印象がどうしても残ってしまう。オービックで何度もレギュラーの座を奪い返してきたように、サイズがないという不利を克服して、どれだけチームの信頼を勝ち取ることができるかにかかってくるだろう。


 それぞれに持ち味はある。個人的な意見だが、米国を倒すことを考えるなら加藤のパスに最も魅力を感じる。オービック戦、IBM戦では早いタイミングのパスを続けて、米国人DLのパスラッシュを機能させなかった。
 果たしてフットボールの本場米国で行われる大会で、日本代表の攻撃を率いるのは誰だろうか。選考過程から注目していきたい。(共同通信社 松元竜太郎)

【写真】LIXILのQB加藤=撮影:Yosei Kozano