1月3日のアメリカンフットボールの日本選手権「ライスボウル」について考えてみたい。優れた能力の選手がそろい、「史上最強」の声すら出る富士通フロンティアーズに関西学院大ファイターズがどうやったら勝てるのかを考えた。なお、在京で社会人中心に試合を見ているので、関学大についての知識が乏しく、記述は少ないがご容赦いただきたい。


 ▽富士通のOLにどう対処するか
 日本代表でもLTを務める小林祐太郎をユニットリーダーとする富士通のOLは、オービック・シーガルズ、LIXILディアーズのような大型重量ラインではない。先発5人の平均体重は120キロを切る。


 しかし、富士通OL陣はとてもフィジカルだ。身体能力は社会人でも屈指だろう。小林は、ケビン・ジャクソン(オービック・シーガルズ)やジェームス・ブルックス(IBMビッグブルー)といった強力なDEにも1対1で勝負して負けない日本人離れした強さを持つ。さらに、先発5人の最年長は小林の26歳、最年少の岩井悠樹は23歳と若く、持久力もある。


 関学大ディフェンス陣は、立命館大パンサーズの学生屈指の大型OLに対処した実績もある。DLが早い動きで割って入り、ランでもパスでも起点に近い部分で止めたい。ライン戦で負けてランでボールコントロールされるようになると、オービックに力負けした昨年の再現もある。


 ▽ランを止める
 富士通にとっての誤算になりかねないのは、QBコービー・キャメロンの出場可否だろう。パスを投げる右肩を負傷しており、仮に出場できたとしても主武器のパス攻撃の低下は否めない。
 ただ控えの平本恵也は日本代表にも選ばれる実力者で、くみしやすいと考えると痛い目に遭うだろう。平本は自らのランも交えた、リードオプションからのランパス自在の攻撃が持ち味だ。
 IBM戦で見せたように、キャメロンと一緒に練習することでパスにも長足の進歩を見せている。さらに今秋のリーグ戦では出場の機会に乏しく、相手にとって分析のための映像が少ないことも利点だ。


 しかし、RBのランを止められれば、脅威は半分以下になる。富士通は前項でも書いたようにOLのブロックが強く正確だ。RBジーノ・ゴードン、高野橋慶大がLOS(ラインオブスクリーメージ)を越えてしまうと、鋭いカットや巧みな加速減速で容易には止まらなくなる。
 副将の小野耕平、山岸明生らの関学大LB、セカンダリーが早い上がりで詰めていかなければ勝負にならない。富士通のドライブの中では、必ずどこかでロスタックルを決め、ロングのシチュエーションを作ることが重要だろう。


 ▽最強守備陣の攻略
 富士通の強さの理由を、QBキャメロンやRBゴードンに求める人は多い。しかし、今季の富士通を見ていて感じるのはディフェンスの強さだ。特にパス守備では、過去十数年の日本のチームの中で最強ではないかと感じる。
 DLには196センチ、118キロのオースティン・フリン、衰えを見せないベテラン平井基之、ルーキー髙橋伶太と、強力なパスラッシャーが顔をそろえる。竹内修平、鈴木將一郎ら大きく速く強いLB陣。そして驚異的なスピードを誇るアルリワン・アディヤミ、インターセプト王の三木慎也、藤田篤とDB陣も強力だ。


 今季リーグ戦でパスで17TDの菅原俊(オービック)、11TDの高田鉄男(パナソニック・インパルス)でも富士通相手にはTDパスを決められず、ナンバーワンパサーのケビン・クラフト(IBM)は、富士通と2度対戦し2TD、6インターセプトと完全に封じられた。


 優れた人材のそろう富士通守備陣にさらに力を与えているのが、強力な「軍師」の存在だ。米国人のトム・カウマイヤーコーチは今秋からチームに加入。試合では必ずスポッター席に入り、ディフェンスやスペシャルチームを中心にゲームを統括している。
 カウマイヤーコーチはNFLジャクソンビル・ジャガーズでDBコーチ、チュレーン大、ハワイ大などではディフェンスコーディネーターを務めた。
 キャメロンら選手を含めても、抜きん出た経歴を持つ。伝え聞くところによると、クラフトですら、毎プレー隊形を変える富士通パス守備を読み切れなかったという。


 現在の学生アメフットではナンバーワンの実力を持ち、肩の強さでは「先輩の畑卓志郎以上」(鳥内秀晃監督)という関学QB斎藤圭にとっても、富士通ディフェンスは昨年対戦したオービック以上の難敵と言っていい。
 ロングパスよりも短いパスを、クイックリリースでパスラッシュが届く前に決めていく必要がある。昨年のライスボウルではパス成績は決して悪くなかったが、レッドゾーンでの決め手に欠いた。
 「バックフィールドには人材がいる」という鳥内監督の言葉通りに、レシーバーを分散し、RBやFBへのパス、スクリーンパスが決められれば、富士通のLBがランをケアできなくなる。攻略の糸口は見えてくる。


 ▽相手を混乱させろ
 米国人選手をはじめ、ポジションごとに核になる高い能力の選手がそろっている点で、過去3回対戦したオービックと似た部分がある。オービックにあって富士通に少ないものはビッグゲームの経験だ。
 富士通はライスボウル初出場、関学大は4年連続出場だ。さらに、両チームは近年オープン戦などで対戦したこともない。「オービックは関学のフットボールに慣れてしまって、引っかからなくなってきた」とは鳥内監督の弁だが、虚実がないまぜになった関学大のゲームメーキングには、経験の少ない富士通は面食らいミスをするシーンも必ずあるだろう。問題はそのミスを得点につなげられるかだ。


 ▽形を変えたライバル対決
 富士通の主力組には日大出身の選手が多い。QBの平本、OLの小林、岩井、WRの中村輝晃クラーク、RBの神山幸祐ら、関学大に甲子園ボウルで苦杯をなめさせられた経験を持つ選手も多い。
特に岩井は昨年、日大の主将として敗れた記憶が鮮明に残っているだろう。また、富士通には立命大出身者も数多い。率直に言って、ジャパンXボウルで勝って待望の社会人王者になった富士通には「飢餓感の低下」があると思う。


 しかし彼らが、学生時代の雪辱として「打倒KG」に闘争心を掻き立てるようなことになれば、関学大にはさらに厳しい条件となる。


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 最近、ライスボウルの終了後に「外国人選手がいるのはおかしい」「やる意味がない」という、ファンや関係者からの意見が陰に陽に出てくる。だから試合前に書いておきたい。
 率直に言って聞き苦しい。文句があるなら試合をやる前に言うべきだし、「ライスボウルは外国人選手出場禁止」というルールを作る運動でもすればいい。鳥内監督の言う「プレー制限」は、関西人らしいユーモアだ。本気でそんなルールを作ったらみっともないだけだ。


 ある意味では関学大の努力を馬鹿にしているとさえ思う。私の見たところ、過去の3年間のライスボウルは決して無意味な試合でも、実力的に差のある対戦でもなかった。前回大会はちょっと差がついたが、その前の2戦は、関学大は最強オービックを何度も心胆寒からしめた。あと一歩のところまで追いつめた。


 いずれの試合も、関学大はオービックの外国人選手や、WR木下典明ら突出した能力の選手をかなりの部分で封じ込むことに成功していた。勝負を分けたのはタレントではなく、結局、球際の強さの差だったと思う。


 アメフットはタレントで決まるのではない。弱いチームが強いチームにどうやって勝つか、それこそが魅力だ。そのために準備期間を与えるのがボウルゲームの良いところだ。さらに日本のアメフットの大きな使命は、いつの日かNFLに日本人選手を送り込む、あるいは米国の単独チームに勝つということだ。
 キャメロンもフリンも確かにすごいかもしれない。だが、このクラスの選手を乗り越えなければ日本のアメフットに未来はない。(毎日新聞社・小座野容斉)

【写真】前回ライスボウルにに続いて、今回も攻撃の主軸となるRB鷺野とQB斎藤=撮影:Yosei Kozano