NFLの開幕というと9月の最初の週末、日曜と思う方も多いかもしれない。実際今年の第1週のメインは第1日曜の7日だった。が、実は正確ではない。


 正しくは「レイバーデーの次の週末」が開幕週なのである。アメリカの休日であるレイバーデーは9月の最初の月曜と定められており、今年は1日だった。
 レイバーとは労働、労働者という意味で、日本風にいえば勤労感謝の日といったところである。この日、ピクニックに出かけたり、バーベキューをして楽しむのがアメリカの伝統の一つなのだ。去りゆく夏を皆で惜しむのである。


 実は1990年代まで、NFLは9月の第1日曜を開幕週としていた。当然レイバーデーのウイークエンドと重なることが多かったのである。
 そうなると外出している人が多く、せっかくの開幕なのに関心が下がることなり、視聴者数が減少するという危機感を持ったのがテレビ中継を行っていたネットワークだった。


 こうしてネットワーク側が強い働きかけをした結果、2001年、当時のポール・タグリアブー・コミッショナーが「NFLファンが夏の終わりと恒例のバーベキューを楽しめるようにすること」を理由に、レイバーデー後の週末開幕で固定することを発表したのである。
 同時にこの固定はスーパーボウルの開催日が第38回以降、それまでの1月の最終日曜から、2月の第1日曜に移行することにもつながった。


 一方、日曜の開幕に先立つ木曜夜に1ゲームのみ行われる”キックオフ・ゲーム”は2002年から開始されている。実は1949年までも木曜開幕はあったのだが、現在のものとはかなりコンセプトが違っていた。


 2002年は前年に同時多発テロが発生し、ニューヨークを中心に復興ムードが高まっていたのである。そのため企画されたのが、先行した開幕ゲームだった。
 そのため当時のジャイアンツ・スタジアムで行われた前年NFC東地区3位のジャイアンツと49ersの一戦が対象ゲームとなり、さらにニューヨーク・マンハッタンのタイムズスクエアで大規模なライブイベントが行われるなどしたのである。


 これが非常に好評だったことから、翌年からは前回スーパーボウル優勝チームによるホームゲームがこの特別な開幕戦として行われることが定着したのだ。
 なぜ木曜かは前回紹介したように高校、カレッジへの配慮と法的制約によるものだろう。


 また、昨シーズンはレーベンズが対象優勝チームだったものの、MLBオリオールズのゲームスケジュールとバッティングし、駐車場が確保できないなどといった理由から、恒例に反し、アウェーのデンバーで開幕戦を行うという事態も起こっている。


 現在NFLでは、レギュラーシーズンを18ゲームに増やす動きが出ている。その一方でネットワーク側はレイバーデー明けの開幕を堅持したい意向だとも伝えられている。
 そうなるとスーパーボウルが2月中旬開催となる可能性もあり、他のスポーツなどとバッティングする可能性も出てくる。NFLのスケジュールで、アメリカの伝統行事に大きな影響が出るかもしれないのだ。


渡辺 史敏 (わたなべ・ふみとし)のプロフィル
1964年生まれ。明治大卒。雑誌編集者を経て1995年に渡米。ニューヨークを拠点にNFLやサッカーなどスポーツ、ITの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国。フリーランス・ジャーナリスト活動を行う他、NFLの日本窓口、NFL ジャパン リエゾン オフィスのPRディレクターに就任。

【写真】NFLは「レイバーデーの次の週末」に開催されている=写真提供:NFL JAPAN