テレビ中継での人気を高め、放送契約により莫大な収益をあげてきたNFL。その一方で、ゲームが行われるスタジアムへ地元ファンが訪れてもらうためのテレビ関連施策も導入している。「ブラックアウト」だ。


 ブラックアウトとは、NFLが各テレビネットワークとの契約に盛り込んでいるルールで、もしゲーム開始72時間前までにチケットが完売していない場合、開催スタジアムから半径75マイル(121キロ)圏の地域ではそのゲームの生中継が停止されるという制度である。


 地元のファンにはまずスタジアムに来てもらい、チケットが購入できなかったらテレビ中継を、ということだ。
 ビジネス面から見れば、これによりチケット販売とさらにはスタジアムでの物販、飲食収入を確保できる効果が望める。さらにテレビ中継においても、画面に映ったスタジアムのスタンドが満員であれば、人気があることが伝わり、見る人の興奮を高め、さらに人気が上がることも期待できるのだ。一石二鳥のルールだということができるだろう。


 このブラックアウトは1951年というかなり早い段階から導入され、NFLの成長を促進する大きな要素となってきた。
 一方で成績不振のチームなどではシーズン終盤などでチケットの販売が不振になることがあるのも事実だ。
 その場合、テレビ中継がなくなることを回避するため、チームが販売期限の延長をNFLに申請して販売に努めたり、スポンサー企業が残ったチケットを買い取ることもある。広告を出しているスポンサー企業としてはテレビ中継がなくなれば大きな痛手となってしまうためだ。


 さらに2012年にはそれまで全てのチケットが完売することが条件だったが、各チームが高価格のチケットのうち85%~100%の間で独自の基準値を設定し、それをクリアできればブラックアウトにならないというルール改正が行われた。一部緩和だといえよう。

 
 ただこの制度は見方を変えると、一般視聴者にとって一方的に視聴機会を奪われてしまうともいえないこともない。
 NFLの場合、独占禁止法に定められた優越的地位の利用に抵触しているとして、裁判を起こされたことがあるが、1953年フィラデルフィア連邦裁判所で適法と認められた経緯がある。


 こうしたこともあって、内容にさまざまな違いがあるものの、大リーグやNBA、NHLなどアメリカの多くのプロリーグが導入するなどポピュラーな制度となっているのだ。
 しかし近年、やはり消費者に不利益をもたらすものだと、一部連邦議会議員が異議を唱えており、アメリカの放送業界を監督する連邦通信委員会(FCC)がスポーツにおけるブラックアウト制度の是非を問う投票を近く行う可能性が出ている。


 これに対しNFLとネットワークも制度維持のためのロビー活動をワシントンで行い対抗している状況だ。
 果たして、60年以上にわたりNFLの発展を支えてきたこの制度の行方がどうなるか注目したい。

渡辺 史敏 (わたなべ・ふみとし)のプロフィル
1964年生まれ。明治大卒。雑誌編集者を経て1995年に渡米。ニューヨークを拠点にNFLやサッカーなどスポーツ、ITの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国。フリーランス・ジャーナリスト活動を行う他、NFLの日本窓口、NFL ジャパン リエゾン オフィスのPRディレクターに就任。

【写真】NFLの人気チームのスタジアムは常に満員となる=写真提供:NFL JAPAN