今年各テレビネットワーク、チャンネルがNFLに支払う放送権料はCBSが10億ドル(約1000億円)、Foxが11億ドル(約1100億円)、NBCを擁するComcastが9億5000万ドル(約9500億円)、ESPNが19億ドル(約1900億円)と見込まれている。
 放送権料だけで約49億5000万ドル(約4950億円)もの収益がNFLにはもたらされるのだ。


 NFLのテレビ人気が確立した1980年代前半、3大ネットワークと言われていたABC、NBC、CBSが放送権を持っており、その放送権料の総額は年4億2000万ドル(約420億円)だった。これでもかなりの高額だが、現在の10分の1にも満たなかったのだ。


 その後1990年から93年の放送権料総額はいきなり年9億ドル(約900億円)にまで高騰する。
 背景にあったのはFoxの台頭だ。1985年にメディア王ルパート・マードック氏らによって設立されたFoxは、当初ロサンゼルスを拠点とする地方局にすぎなかった。
 しかし、急速に全米ネットワークを構築していき、ついには以前の三つにFoxを加えた「4大ネットワーク」と呼ばれるまでに成長したのである。


 そして前回紹介したように四つのNFL放送パッケージを五つのネットワーク、チャンネルを奪い合う構図が形成されたのだ。
 1994年から97年の放送契約においては、Foxが日曜午後のNFCパッケージの権利を得るのに成功。この時Foxは年3億9500万ドル(約395億円)を支払ったと見られている。
 一方、それまで同パッケージを38年間にわたり放送してきたCBSは放送権を失うことになった。この時放送権料の総額は11億ドル(約1100億円)と10億ドルの大台を突破している。


 こんなに高額になって支払う側のネットワークは大丈夫なのか? と、疑問に思う人も多いに違いない。実際のところ、高騰が始まった90年代ごろからアメリカのテレビ、広告業界ではゲーム中継単独では赤字になっているとささやかれ続けているのだ。それが表面化したのが1998年から2005年の放送契約だった。
 それまで日曜午後のAFCパッケージを放送してきたNBCが契約を結ばなかったのである。


 この時期NBCはNFLのみならずプロバスケットボールNBAなどメジャーなプロリーグの放送権料が高くなりすぎているという考えの下、放送契約を結ばない戦略をとっていた。
 代わりにNFLに対抗するプロリーグとして、プロレス団体WWEが設立したXFLなど、主に若者向けの新興スポーツを放送し、育てていこうとしたのである。
 だが、この戦略はXFLが1年で破綻するなど失敗、NBCは2006年から13年の契約でサンデーナイトの放送権を獲得し、NFL中継に復帰することとなった。


 各ネットワークとしては、ゲーム中継そのものは赤字ではあるものの、その視聴率の高さ、さらにはゲーム前に予想などを放送するプレゲームショー、中継終了後に放送されるドラマなどへ視聴者が流れる点などを考慮し、ビジネスとして実利があると判断しているようだ。(NFL JAPAN 渡辺 史敏)


渡辺 史敏 (わたなべ・ふみとし)のプロフィル
1964年生まれ。明治大卒。雑誌編集者を経て1995年に渡米。ニューヨークを拠点にNFLやサッカーなどスポーツ、ITの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国。フリーランス・ジャーナリスト活動を行う他、NFLの日本窓口、NFL ジャパン リエゾン オフィスのPRディレクターに就任。

【写真】NFL中継の放送権料は高騰を続けている=写真提供:NFL JAPAN