ゲーム以外に行われるリーグの年間行事をイベント化し、新たな収益源として育てているNFL。その代表格がドラフト会議だ。


 NFLのドラフトは、各チームが指名選手を一斉に発表するのではない。前回紹介しているように下位チームより順に指名するウェーバー方式がとられ、さらに指名権のトレードが行われる。
 ドラフト開始前後から各チームにより丁々発止のやりとりがあり、状況が刻々と変化していくのだ。その点でまさにファンを引きつけるのにうってつけの行事なのである。


 その点に早くから着目したのが、スポーツ専門局ESPNで、1980年からドラフトを生中継するようになった。これが好評であったことから、NFLは1988年にドラフトの開催日を土日の週末に移し、さらなるファン獲得を図ったのである。
 さらに1995年からはニューヨーク市内マジソン・スクエア・ガーデンの劇場や有名なラジオシティ・ミュージックホールなどでドラフトを開催。観客席をファンに開放し、開催地での集客イベント化も行い、成功を収めた。


 そして2010年、NFLはさらに大きな改革を行った。それまで計7巡の指名を土日の日中から夜にかけての2日間で行っていたのを木曜の夜に1巡を、金曜夜に2、3巡を、土曜の昼から残りを実施する3日間制を導入したのだ。
 注目の集まる上位指名を週後半のゴールデンタイムに開催することでこれまで以上に視聴者の注目を集めることを狙ったのである。


 さらに上位指名が期待される有力選手が高級車で乗り付け報道陣の中を会場入りするレッドカーペットや、各チームの過去の名選手による指名読み上げなど、さまざまなエンターテインメント化も行われた。
 また、従来行われていた会場へのファンの無料招待の他、ステージ近くの指定席や有名解説者などによる解説イベントなどがついた有料ツアーも実施されるようになっている。毎年多くのファンが全米からドラフトを見るために集まるようになっているのだ。


 そして、こうしたイベント施策は見事に成功を収めている。中継の視聴率は3日制導入後急上昇、さらに年々増加しており、今年のドラフトでは1巡指名が行われた1日目でESPNは18~49歳における視聴率で4・59を記録。これは同夜に行われたプロバスケットボールNBAのプレーオフ中継を3倍以上引き離すものだった。
 今やアメリカのスポーツファンにとって、NFLドラフトはなくてはならないイベントに育っているのである。(NFL JAPAN 渡辺 史敏)


渡辺 史敏 (わたなべ・ふみとし)のプロフィル

1964年生まれ。明治大卒。雑誌編集者を経て1995年に渡米。ニューヨークを拠点にNFLやサッカーなどスポーツ、ITの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国。フリーランス・ジャーナリスト活動を行う他、NFLの日本窓口、NFL ジャパン リエゾン オフィスのPRディレクターに就任。


【写真】発展を続けるNFLのドラフト会議=写真提供:NFL JAPAN