リーグ全体での成長を担う戦力均衡戦略の大きな柱の一つとなっているのがドラフトだ。
 NFLのドラフトで一番の特徴は「ウェーバー方式」をとっていることである。ウェーバー方式とは、各指名巡とも前シーズンの勝率が低かったチームから順に指名を行うもの。


 つまり前年最下位だったチームは、基本的にその年最も評価している選手を指名できるのである。
 成績が悪いチームほど将来有力な選手を指名することができ、戦力を補強することが可能なのだ。また、有力な選手はほとんどの場合、大学で活躍した人気選手であり、そうした選手を指名、入団させることで人気を獲得し、チームの営業面にもプラスをもたらすことが期待できる。


 もちろんドラフトを受ける選手は「将来有望」という事前評価によるものであり、実際活躍できるかどうかは別問題で、指名、獲得したチームによる育成なども影響する。
 そして、ドラフトに関して見逃してはならないもう一つの重要な点が、指名権をトレード可能であることだ。
 指名権をその年の指名権はもちろん、将来の指名権や所属選手などと交換トレードすることができるのである。例えば1巡1位指名権を他のチームの持つ1巡5位と来年の1巡指名の二つと交換したり、有力スター選手とその年の3、4巡指名権と交換したり、という具合だ。


 また、1巡18位指名権を持つAチームはαという選手を指名したいと考えているが、7位指名権を持つBチームが同じαを指名しそうだという情報を得たので、5位指名権を持つCチームにトレードを打診し、18位指名権と来年の1巡指名権を差し出す代わりに5位指名権を獲得し見事α指名に成功、といった例も見られる。
 この場合、Aチームはトレードで指名順位を上げたのでトレードアップと呼ばれ、Cチームはわざと指名順を下げたのでトレードダウンとなる。


 さらに上位で契約金の高い有力選手を獲るよりも、トレードダウンで下位指名権を集め、数多くの選手を集め、原石の掘り出し、育成を図る戦略や、将来よりもベテラン選手の獲得で即戦力アップといった策をとることもできるのだ。
 ウェーバー方式とトレードの組み合わせは、ただ単純に下位から有力選手を指名するだけではなく、各チームがそれぞれに考える戦力増強方法を可能にする多様さを実現しているのだ。(NFL JAPAN 渡辺 史敏)


渡辺 史敏 (わたなべ・ふみとし)のプロフィル

1964年生まれ。明治大卒。雑誌編集者を経て1995年に渡米。ニューヨークを拠点にNFLやサッカーなどスポーツ、ITの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国。フリーランス・ジャーナリスト活動を行う他、NFLの日本窓口、NFL ジャパン リエゾン オフィスのPRディレクターに就任。


【写真】今年のドラフト、全体1位でテキサンズに指名されたDLクラウニー=写真提供:NFL JAPAN