4月12日に川崎富士見球技場で開催された日本代表とドイツ代表の国際親善試合は、38―0という大差で日本が勝利した。
 身長200センチを超えるWRをはじめ、ドイツチームで目立っていたのは選手の規格外のサイズだけで、日本になすすべなく敗れる寂しい試合内容だった。NFL選手も輩出している、欧州最強のアメフット先進国といわれるドイツの実力を探った。


 ▽NFLの撤退
 2007年にNFLヨーロッパが消滅するまでは、リーグでの活躍がNFLへと直結しており、プレーする選手たちのモチベーションになっていた。
 06、07年にスペシャルチームのオールNFLヨーロッパに2年連続で選出されて、NFLのアトランタ・ファルコンズと契約した木下典明(オービック)もその一人だ。


 だが、現在はドイツの国内リーグでプレーしていても、最高峰の舞台への道は開けない。優秀な選手は早い段階での米国移住を選択するようになっている。
 ニューヨーク・ジャイアンツに所属するDLマーカス・クーンは、ドイツの高校からトライアウトを受けてノースカロライナ州立大に奨学生として入学した。大学でも活躍し、2012年に欧州出身選手としては数少ないドラフト入団を果たしている。
 現在、ドイツ協会が把握しているだけでも6人ほどの選手が、テネシー大、ワイオミング大などの米強豪大でプレーしており、NFLを目指しているという。


 「米国に挑戦したトップ選手たちは、ほとんどが帰ってこない」。ドイツ代表のマーク・タピー・チームディレクターは切実な悩みを語る。
 国内リーグはもちろん、代表チームの招集に対しても、米国で活動する選手たちが合流することはほとんどない。大リーグでプレーするトップ選手がWBCへの参加を見送っている野球の日本代表と状況は似ているかもしれない。


 ▽競技人口は増加傾向
 底辺の拡大についてはどうか。ドイツにおけるアメリカンフットボールの競技人口は、数年前までは日本と同じ2万人前後だった。2010年ごろから急激に増加していて、現在は5万人を超えているという。
 競技普及の最大の要因は、若年層へフラッグフットボールが浸透したことだ。学校でフラッグを体験した子どもたちが、地域のチームでフットボールに取り組む。この流れが定着しつつあるという。


 潜在的なフットボール人口は日本も負けていない。日本フラッグフットボール協会の尽力により、2011年に小学校の学習指導要領にフラッグフットボールが記載された。さらに、1200校以上の小学校にフラッグの用具を無償で寄贈している。
 日本全国の小学校の10校に1校がフラッグフットボールを授業に取り入れているというデータもある。


 だが、日本は小学校で子どもたちがフラッグに興味を持っても、継続してプレーできる環境がほとんどない。アメリカンフットボール部のある高校、大学も限られており、多くの地域で受け皿がない状況だ。
 川崎市市民スポーツ室の金井由明さんは、「まずは小学校、中学校でフラッグに親しむことが第一歩」と話す。中学校の授業でも、もっとフラッグが行われるよう活動を続けているという。


 「優秀な選手が米国に流出」。ドイツにとっては悩ましいこの状況こそ、日本にとって待ち望まれる未来だ。ドイツ国内リーグや代表チームのレベルが伸び悩む一方で、NFL選手の輩出という点では確実に成果を挙げている。
 才能のある選手が勇気を持って海を渡れば、日本人初のNFL選手は必ず誕生するだろう。(共同通信社・松元竜太郎)

【写真】川崎市富士見中学校の生徒たちと交流するドイツ代表の選手たち=11日、川崎富士見球技場