球春到来、春の甲子園が始まり、金曜日からは日本のプロ野球が開幕、そして来週からはアメリカ本土でメジャーリーグが開幕する。

 アメリカでのスプリングトレーニングでの取材中、フロリダ、アリゾナで聞いた興味深い話があった。

 アメリカのメディアに関することなのだが、友人によれば「若い新聞記者は、野球担当になりたがらず、アメリカンフットボールのNFLを希望するケースが目立ってきた」という話だった。

 その背景にあるものは何か。

 野球は時間的な拘束が長すぎる、というのが根底にあるようだ。

 シーズン中は、当然のことながら試合の半分は遠征。年間100日以上出張に出かけるケースも珍しくない。野球は“Traveltoo much”の競技ということで、敬遠される傾向にあるという。

 その点NFLの場合、レギュラーシーズンは年間16試合、ホーム、アウェーとも8試合ずつだから、野球に比べればはるかに出張は少ない。

 また、現実的に見て、NFLの記事に対する需要が高いことは確かで、若い記者の間で花形競技に対するあこがれが強いのだ。

 一方で、野球の現場では違うトレンドも見受けられた。めがねをかけ、体つきの華奢な若者が取材に足を運んでいた。選手や監督に話しかけるのを、ためらうような謙虚な若者たちである。

 カンザスシティー・ロイヤルズのキャンプ地で、若い記者に話を聞いてみると、「『マネーボール』で有名になったけど、野球を数学的に分析する『セイバーメトリクス』に興味があります。そうした観点を生かして、野球の記事が書ければと思って」と話していた。

 出塁率に注目し、アメリカの球界の常識を覆したとされる『マネーボール』が出版されたのが2003年のこと。すでに10年以上が経過し、当時、ティーンエージャーで『マネーボール』に熱狂した世代が、社会人として活躍する年齢になっているのだ。

 彼らが主流になるかどうかは分からない。しかし、野球メディア全体への影響は不可避だろう。

ひょっとしたら、野球メディアも変革期を迎えているのか…。そんなことを感じたスプリングトレーニングだった。

生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル

 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBSのスポーツ番組ではキャスターを務めている。

【写真】米メディアの取材を受けるレンジャーズ・上原(右から2人目)=2012年、サプライズ(共同)